雑記

雑記

 

ついこの間インフルをやったばかりなのに、今度はコロナに罹ってしまい全く弱っている。別に病弱キャラではなかったつもりなのだけど、これがアラサーになるってことなのかなあ。

実はコロナになったのはこれが初めてなのだが、熱・喉・腹を網羅されており、噂の通りこいつはなかなかやっかいである。おかげで全く萌えることもギターを弾くこともできない。そのくせ頭はわりとはっきりしていて、くだらない考えだけが頭に浮かんでは消える。なので、暇を潰すためその考えを適当に書き留めておこうかと思う。思いついたことを思いついた順に書くので、まとまりはない。

 

 

この前フォロワーのスペースに参加して、萌えとは何かについて談義する機会があった。そこで私は、「萌え」という言葉はいつしか「推し」へと置き換わり、カルチャーはいまや80年代後半のベイエリアスラッシュメタルのように毒気を抜かれてしまった、というようなことを話したのだが、それをよく表す対照的な例が俺妹と着せ恋じゃないだろうか。

俺妹・着せ恋は双方とも、クラスの人気者のギャルが実はエロゲーオタクである、という点で共通している。つまり、本来スクールカースト上位に位置しているであろうギャルがオタク趣味を持っている、というギャップによってキャラ付けをしているのだ。しかし作中での、「ギャル」と「オタク趣味」の距離感は全く異なる。そしてそれは、ここ10年間の「オタク」の変遷をよく表しているように思う。

2010年放映の俺妹では、桐乃は自身のエロゲー趣味をひた隠しにしている。スクールカースト上位にいる自分が、実はエロゲーが好きなんてバレたらどう思われるか。彼女はそう考えている。当時はそのくらい、ギャルがオタクであることはありえない(少なくともそういう扱い)だったということだ。しかしそれより重要なのは、その兄京介や彼の家族も、そういったオタクカルチャーを、(少なくとも当初は)不健全な趣味だと見做していたということだろう。つまりここから、2010年当時ではまだオタク趣味やオタク文化自体が不健全なもの、つまりイーヴル&ナスティなカルチャーだという客観的視点がしっかり存在していたということがわかる。だからギャルがオタクなんてことはまずありえない、なぜならそれはキモいやつらの趣味だから(余談だが、NHKにようこそなんかも最初は主人公がオタク趣味にドン引きする描写があるし、当時はわりかしオタク向けの作品の中においても、オタク文化に対して客観的な距離の取り方をするものが多かったように思う)。まあ結局俺妹も好きなものは好きなものと言ってもいいよね!という話になっていくわけだが、今回の論点ではないのでそこについては語らない。

対して2022年放映の着せ恋において、ヒロイン喜多川海夢は自身の趣味を全くもって隠そうとしていない。アニメ1話における、喜多川海夢の(オタクではない)友人に対し自身の趣味について一方的に語りまくるシーンなんかがそれを代表しているだろう。そしてクラスメイトや主人公もその趣味についてとても寛容である(それを馬鹿にしてくる奴も"ありえない人間"として冒頭に登場するが)。更に、彼女に寛容なのは、作中の登場人物のみでなく、2022年にこれを見ている多くの視聴者も同様だと思われる。これはオタク層のみならず、少なくない非オタク層もそうなんじゃないかな?まあ彼女の趣味は少々極端にしろ、少なくとも2022年時点でギャルがなんらかのオタクである、ということに違和感を覚える人間はわりと少ないのではないか。つまり、俺妹の桐乃と違い、喜多川海夢が自身のオタク趣味を隠さないのは、別に彼女がおかしいわけではなく(いや、エロゲーの話をベラベラするのはやっぱりおかしいと思いますが……)、時代が変わった、つまり別にスクールカースト上位の人間がオタク趣味を持っててもまあそんなに違和感がなくなったってことなんじゃないだろうか。

まあだから何だって話だし、それはいいことじゃないかって話なんですが。

でも俺はサブカルチャーにはサブカルチャー性そのものが持つ機能があると思っている。例えば、ブラックメタルは、少なくとも現在の日本の商業音楽シーンの本流には絶対になり得ないし、だからこそ価値がある。ブラックメタルを聴くことで、俺たちが絶対に勝てないあいつらを少しでも負かした気分になれるからだ。それに、イーヴル&ナスティじゃないメタルなんて一体なんの意味があるだろう?メタルなんてのはそのジャンル自体に攻撃性とか不謹慎さを内包してるものだし、だからこそそれが救いになる人も少なからずいるのだ。

そしてオタクカルチャーも本来そういう側面を持ってたように思う。やっぱりちょっと前までのオタク文化とか、インターネットには、気持ち悪い奴の方が強い!みたいな、インナーサークルみたいなノリもあったと思うし、2010年代に入ってからも、少なくとも14年くらいはアニメにもそういうノリが若干残ってた気がする。そういうのをみんなは厨二病とかって馬鹿にするかもしれないが、やっぱりそういうのないと息詰まるし、俺らはどこ行きゃいいんだよ。近年、オタクを綺麗にしようとする連中(アイドルや声優の現場に小綺麗な格好で行け、とか、女性声優の結婚にブチ切れるな、とかいう奴)が散見されるが、全くイライラする。ブラックメタルを漂白したら無意識なように、オタクも漂白したら無意味になる。

最近Twitterで、オタクという言葉が陰キャやチー牛という言葉に取って代わられた、みたいなツイートがバズっていたが、それは明らかにオタク文化からサブカルチャーとしての機能が失われた結果だろう。そして、ユニクロで売っているメタリカやミスフィッツTシャツが全くの無価値であるように、民族的背景を失った文化はその価値を少なからず失う。大資本がオタク文化からそれを奪った罪は大きい(まあメタルと違ってアニメはそもそも商業的なものだから、それは当然なんだけどね)

オタク文化がここまで一般化した理由って結局(オタクが嫌いな)大資本によるゴリ押しによるものに他ならないと思う。特にラブライブはデカいよなあラブライブは一期からリアルタイムで視聴していたが、個人的な感覚だとラブライブ人気に火がついたのってスクフェスからな気がする。もちろんアニメ一期から人気はあったけど、あくまでオタクの中でって感じだったような。少なくともμ'sMステ出れたりしたのはスクフェス人気に後押しされたからだと思う。で、そのスクフェスが売れたのって当時スマホが普及したのもあるだろうけど、単純に金かけて宣伝しまくってたのが大きいように感じる。これは実感としてあるのだが、ラブライブ一期放送終了後の2013年くらいを皮切りに、明らかに普通の時間帯の普通のチャンネル(つまり、夜0:30以降のTOKYO MXではないという意味)でオタクコンテンツのCMを見かける機会が増えた。今でこそ3秒に一回の量でオタク向けソシャゲのCMが流れてるけど、当時はすごくびっくりしたのを覚えている。二次元美少女が描かれた看板も、2013年以降から如実に秋葉原や池袋以外の山手線各駅で見かけるようになった気がする。そして結局(これはオタク・非オタク問わず)人間は人が好きなものが好きなので、オタク文化は無事一般化して行ったんじゃないのか。まあそれ以前からニコニコブームとか、インターネットの一般化とか、アキバ文化を世界に向けてマーケティングする流れとか、そういうのが積み重なってオタクは全然一般化していたと思うが、(アニメ)オタク文化発のユニットがMステに出るなんてことになり得たのは、やっぱり2013年以降のそういう空気感によるものだと思う。まあ2010年代自体が殊更にそういう時代だし、当の俺もその波に乗ってオタクになったわけだからそこに文句言うのは自己矛盾が起きるんだけど。

しかし、2010年代のアニメは前半と後半でちょっと違う気もしていて、それは80年代におけるメタルの栄光と没落の流れに似ている気もする。

2010年代前半のアニメは、オタク向けアニメのもつ不健全さ・イーヴル&ナスティネスが最大限に増幅した時代ではないだろうか。2010年代前半に(そしてラブライブ以前に)起こったアニメ・ムーブメントとして代表的なものは、やはりはがないを始めとするラノベ原作部活ものであろう。先述した俺妹は、オタク向け作品の中でオタクカルチャー好きの美少女を扱った作品の草分けでもあると思っているが、はがないはその影響を受けつつ更に先へと進んでいる。これらの作品群の大きな特徴として、読む側のオタクやインターネットカルチャーへのリテラシー(ネットリテラシーではない)が必須であるということだ。そして、特にはがないは当時の中高生が好きなインターネットのノリ(あれはニコニコとか2ちゃんじゃなくて、まとめサイトのノリだと思う……つまり最悪なんだけど)をそのまんま小説にしたような内容で、まさしくナスティ。最近はがないを見直していてビックリしたのだが、幸村が隣人部を初めて訪れるシーンで、夜空がいきなりイジメの残酷さについて語り出すシーンがある。お前がやってるのがまごうとこなきイジメだろ、というツッコミは置いておいて、本来はそんなツッコミが入るべき可笑しなシーンなのだが、アニメではそこだけ唐突に深刻な演出になる。その唐突さも相まって、どう見ても夜空がインターネットの住人に精神を乗っ取られたようにしか見えないのだ。というのも、まあ今もだけど、当時のインターネット(というかまとめサイト)、では、イジメはする側が100%悪い、イジメる奴はぶっ殺していい、みたいな価値観が過度に強調されていた。いやまあそれは100%正論だし、同意するし、俺もイジメられる側だったからわかるんだけど、それがよく言われる背景には、オタクはみんないじめられっこみたいな、なんというかオタク全体主義的な雰囲気があったと思う。ちょっと話が逸れたけど、つまり一連の作品群は視聴者がインターネットを見ており、その文化について一定の知識があることが前提で話が進むのが特徴的だ。例えば俺修羅の部活名、自演乙なんかは、元ネタのネットスラングを知らないと面白くもなんともないし、(薄っぺらな)オタクなら好き"そう"だよねという作品のパロディもたくさん出てくる。さっきのはがないの件についても、言ってることは正論だけど、インターネットのそういう言説に普段から触れてないと、いきなり何?ってなる気がするのだ(視聴者がその空気感を知っている前提の演出がなされてるように思う)。あと、登場人物がみんな友達いないとか、引きこもりとか、そういう設定が10年代前半には多かった気がするけど、それもオタク全体主義的な空気によるものな気がする。

まあそんな感じで、俺妹と比較してオタク文化を客観視する視点(というより、一見さん向けの気づかい)はほぼ消え失せたけれども、はがない等の作品群には、そういったオタクは(事実はどうかは置いといて)マイノリティであり、かつイーヴル&ナスティであるという意識はまだみられるように思う。つまり、俺妹にはあった外からの攻撃的視点はなくなったけれども、内からの自虐的時点は残っているということである。残っているという表現はちょっと違うな、むしろ肥大しているのだ。

何を言いたいかというと、この時代のこれらの作品群は、本来外部からの差別的な偏見であった、「オタクはいじめられっこ」「オタクはキモい」「オタクはこういう作品が好き」みたいな考えを、作者や読者のオタク側が大いに内面化していたということだ。というかむしろ、「オタク」のそういった(ある種偏見に近い)ネガティブな側面にこそ憧れと救いを抱き自らをオタクと呼称した人も多かったからこそ、こういった作品群が人気を得ていたのではないだろうか。俺が筋少の踊るダメ人間を聴いたとき、なぜ衝撃を受けたかって、それは自分のネガティブな側面を開き直って表現していた(と、当時は感じた)からであるけど、当時のオタク観には大槻ケンヂと同様の魅力があったように思う。そして、自虐的な視点からの「酷さ」もこの時期にピークに達していたと思う。どうでもいいが、就職活動のエントリーシートで、自分の強みとか、とにかくキーワードを一々「」で囲って書いてるやつがいっぱいいて、馬鹿なんじゃねえのかな〜と正直思っていたが、そういう奴らは軒並みいい会社に行ってたので、お散歩モコちゃんってことなんだろうなあ。話を戻すと、例えばおにあいとか、中妹みたいな、あの辺のバカ・エロ・ラノベ/漫画原作アニメ群には、ある種オタクは不謹慎かつ不健全であるべきという自意識が内包されていたように感じるのだ。そういう意味で俺の中でそれらのアニメ群とAbigailは同列である。ブラックメタルも、萌えアニメも、バカでエロで不謹慎だから良いし、価値があるのだ。そういう意味で言えばはがない系のアニメとVenomを発端とするオリジナルブラックメタルは、そのジャンルの極端な部分のみを煮詰めた部分に共通点があると言えよう。

ところで私は弱者男性である。つらい。つらいよー。なぜ私は負け続けているのだろう。それは10代で敗北

Backwater 1stと2nd 感想

お久しぶりです。

ここ半年ほど、諸事情あって萌えから離れなければならない状況だったのですが(ぼっち・ざ・ろっくは見た)、その用事も済んだのでようやくがっぷりと萌えに向かうことが出来そうです。見たいアニメが山積みですが、過酷な日々が開けると逆に何もできなくなるもので、これからゆっくり消費していければと思います。

ところで、私はその半年間、精神の幼児退行とともに私の原点ともいえるブラック・スピード・メタルを聴きまくっていたのですが、その中で(現実逃避も兼ねて)悶々と感想を考えもしてしまってましたので、こちらのほうもゆっくりブログに書いてければなあと思って今回ブログを更新しました。

今回書くのはこれです。

 

Backwater – Revelation

 

 

ドイツのスピード・メタルの84年1stアルバム。僕が持ってるのは彼らの1stと2ndのコンパチですので、1stと2ndそれぞれを書きたいと思います。まずは1stです。

ここ半年間で聴いてたスピードメタルの中でも、特にBackwaterにはガンハマりしてしまいまして、一時期はベルギーKillerとともに狂ったように再生してました。

BackwaterはBaphomet’s Bloodの2ndアルバムジャケットでメンバーがTシャツを着てることからもわかる通りのモーターヘディッシュなスピードメタルです。しかしながら、彼らはモーターヘッドと同じレベルでVenomからの影響も大きいように感じます。

このアルバムの魅力は、1、2曲目に代表されるようなモーターヘッドからの影響が大きいスピードメタルにプラスして、Venomが持つダークネスをサタニック&神秘的な雰囲気で表現してるところで(歌詞の内容はサタニックではないけど)、Venomの中でもAt War with Satan~Possessedくらいの時期に顕著な暗さ・神秘性・メロディアスさまで汲み取っているのがとてもカッコいいです(特にWarheadシングルあたりの雰囲気っぽい!)。でもヴォーカルはクロノス風ではなく、声は細いけど頑張ってレミーを目指してるような感じなので、速い曲なんかはまるでFingernailsがVenomのダークネスを取り込んだようなスピードメタルでめちゃ渋い!またこのアルバムではドラムが相当つんのめってますが、そのつんのめり方が個人的に大好きな曲であるWoman, Leather and HellとかDead of the Nightにおけるアバドンのそれに近くて本当に素晴らしい。また、8曲目に収録の”Witchchaser”が非常に渋くて、この曲はSeven Gates of HellやIn Nomine Satanasなどで表現されているVenomの神秘性やオカルティズムを明らかに意識しています。84年にVenomの持つ静や美の要素に目を付けていたバンドはあんましいないんじゃないのかな?わかんないけど。まあWarheadシングルもリリースは84年なので時代考証的にはおかしいかもですが、Aメロでの、ベースがルートを刻む中でギターがD→CをジャジャーンってやるのなんかもろVenomっぽいよなあ。BulldozerはVenomのオカルティズムをMercyful FateやDeath SS影響下のシアトリカルな表現に曲解して表現していたと思ってますが、Backwaterはよりオリジナルに忠実だと思います。これと3曲目”Bad Choice”はギターソロもメロディアスな時のマンタスのソロっぽいです。妖しげなアルペジオから爆走する”The Black Knight and The Holy Sword”と”Hell-Cat”は妖しさ・ダークネス・つんのめりというこのアルバムの魅力が全て詰まった曲になってます。どうでもいいけど、このアルバムのThe Black Knight and The Holy Swordとか、あとベルギーWarheadのFirst Light of The Apocalypseとかみたいな、無意味に曲名が長くて大仰なのに、曲は短くて普通のスピードメタル、みたいなのが大好きなのでいつか自分でもやりたいなあ。

 

Backwater – Final Strike

 

 

続けて86年2ndアルバム。

前作でつんのめりまくってたドラムをはじめとして、全体的に演奏力が向上した結果、前作に顕著だったVenom-ismは減退しましたが、その代わりにジャーマン鋼鉄感が増し、しかしながら音像のダークネスは全く変わってないので、今作はFingernailsに前作におけるVenom性の代わりにIron Angelのサタニック・ダークネスをブチ込んだような感じで、こちらもとてもカッコいいです。特にA面のミドルテンポ・ナンバー2曲は、ドラマ性と暗黒性が前作より増してるので、Late 80’sのダーク・スラッシュが好きな人にもオススメできそうなくらいかも。A面ラストの”Nuclear War”はミドルテンポ曲のダークネスをそのままに疾走する名曲です。しかしB面ではダークなA面と打って変わって、R&Rな曲を連発しているので、1stのR&R感への期待にもしっかり答えています。ただ、A面とB面のノリがかなりアンバランスなので、(再発CDで聴く私のようなカス・ポーザーにとっては)ちょっとマイナスな部分かもしれません。曲はとてもいいですけどね。

あと、これは1stもですけどこのバンドは音作りがとても良くて、全体的にロウ・ミッドな粘り気のある音作りがこのバンドの暗黒性の表現するのに大きな役割を果たしてるのかも。ベースの音はかなり(Warheadの時の)クロノスっぽいぞ!

 

 

www.youtube.com

ちなみに彼らがTVに出演した際の映像がYouTubeに上がってまして、ギタリストは渋くキメたがってるのに、ちょっとウザいくらいにドランクなノリのベーシストが全てを破壊していて、これがまた味わい深いです。しかもこのベーシスト、ロン毛ですが頭頂部がちょっとハゲてて泣けてきます。この動画を見てると、彼らのR&Rなノリとダークネスはベースとギターそれぞれが持つ個性が融合した結果なのかなあ、とも思えてきます。

Bulldozer 80年代のアルバム 感想

秋だ!紅葉だ!シルバーウィークだ!

シルバーウィークといえば?……そう、ブルドルゼルです。

まあぶっちゃけシルバーウィーク関係なしにいまブルドルゼルがちょっと盛り上がり気味なので、100%自己顕示欲を満たすため、昼休み中ヒルナンデスを見ながらシコシコ書いてみました。前回と比較してかなりテキトーかもですが、お暇なときにでもどうぞ。

 

・1stアルバム 『The Day of Wrath』

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怒りの日ことThe Day of Wrathです。汚くてドタバタなブラックメタルで、このアルバムを一言で評するなら"イタリアのVenom"ってことになるわけですが、この"イタリアの"って部分が非常に重要だと思ってます。というのも、個人的な初期Bulldozer最大の魅力は、Venom及びTankの影響絶大な汚いロックンロール・ブラックメタルでありながら、イタリア暗黒音楽の遺伝子も絶大に受け継いでいる部分だと感じているからです。最初にデモを送った相手がキングダイアモンドだったっていう有名な話や、AC Wildのマント姿にも現れているように、Venomに絶大な影響を受けながらも本家とは明らかに別ベクトルの、(イタリアじゃないけど)Mercyful FateやGoblin、そして何よりもDeath SSに影響を受けていると思われるイタリアならではの暗黒オカルティズムが音に表出しまくってるのがカッコよすぎると思います。もちろんVenomにもサタニック・オカルティックな部分はありますけど、BulldozerはVenomのサタニック・オカルティックな部分をDeath SSや(イタリアじゃないけど…)Mercyful Fate、それ以前のイタリアン暗黒プログレやハードロックのような暗黒シアトリカルな方向で表現してる気がして、実際それがアートワーク・見た目とか音の雰囲気に現れてるところがすごく好きなんですよね。

イントロThe ExorcismとアウトロEndless Funeralは、その無意味な長さ・クワイアと詠唱のサンプリングに重なる邪悪すぎるうめき声・妖しすぎる雰囲気と、完全にイタリア暗黒音楽だし(Venomより宗教感・儀式感を押し出してるのがイタリアっぽいのかも… 宗教感ってなんとも頭の悪い表現ですけど)、実質ラストのWelcome Deathはサバステイストこそあんまりないものの、完全にイタリアン・オカルティック・ヘヴィメタル!その他本編も、曲はわりとロックンロールなのに、ヴォーカルのリバーブが凄すぎて一番ノリノリなナンバー、Whiskey Timeですら妖しすぎる。全体に漂う黒いというよりは薄紫の瘴気のような妖しい雰囲気が最高すぎます。Mortuary DrapeとかOsannaにも似たような空気を感じるけど、こういう空気感はイタリア独特のものだと思います。本作でのAC Wildのヴォーカルは、(いい意味での)声量の足りなさと異様にかけられたディレイ・リバーブも相まって、まるでモーターヘッドレミージャパコアっぽくなったようでカッコ良すぎる!

あとBulldozerの特長のひとつとしてメロディアスなギターソロがありますが、本作の場合はCut throatやThe Great Deceiverなどがいい例だと思うけどメロディがかなりクラシカルで、この雰囲気の中でやられると中世宗教感も増してますます妖しい!

曲単位で言えば、Cut throat・Fallen Angel・Whiskey Timeはメタルパンクス御用達のメタルパンク・クラシック。特にFallen Angelは完全にAbigailの元ネタなドライヴィン・ロックンロールからのメロディアスな必殺ツインリードで絶頂させる名曲です。Insurrection of the Living DamnedはドタドタしたタテノリのリズムがモロVenomですが、ヴォーカルのディレイ・リバーブが深すぎるのとアルペジオなのか弾けてないのかわけわかんないリフがカッコ良すぎる。AbigailのMetal Got Sickのアウトロはたぶんこの曲のアウトロのオマージュだと思います。The Great Deceiverはクレイジーに弾きまくるリードギター、謎にテクニカルなリフと完全に終わらせどころを見失っただけのアウトロが最高で、歌い出しのフレーズWelcome All Hell FuckersはAbigailのEP名になってます。Mad Manもクレイジーなギタープレイと曲展開の曲ですが、この曲は途中のツインリードがちょっとオリエンタルなのが良いです。このアルバムは全体的に曲展開が唐突でわけわからんのがアツいですよね。ところどころ謎にテクニカルなところとか、演奏の勢いだけっぷりとか、完全に初期衝動で泣けてきます。そして、曲展開が唐突&メチャクチャなのも、イタリアン・暗黒プログレの特徴ですしね。とにかく、俺のようなペーペーのゴミに言われるまでもなく全メタルパンクスマストの名盤だと思います。

 

・2ndアルバム 『The Final Separation』

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2ndアルバムです。わりと地味な立ち位置のアルバムらしいですが、個人的には非常に好きな作品です。というのも、さっき書いたように、BulldozerはVenomからの影響と同時によりシアトリカルなサタニックメタルからの影響も大きく受けているっぽいのが魅力ですが、そのシアトリカルメタルの部分が最も出てるのがこのアルバムだと思うからです。このアルバムは前作以上にVenom/Tank直系のロックンロールとイタリアン・ダークネスの融合が渋すぎる!Bulldozerで一番妖しくてサタニックなのはこれかなと思います。

といってもその大部分を担ってるのが一曲目The Final SeparationとラストThe Death of Godsの二曲なんですが。二つとも前作のWelcome Deathを引き継いだようなサタニック・メタル・ナンバーで、なんといっても耳を引くのがクリーンギターの使用とオペラチックというか、似非クワイアなコーラスワーク。私はこういうのをやられると問答無用で泣いてしまいます。たぶんMercyful Fateからの影響が大きいのでしょうが、イタリアのバンドはそもそもコーラスワークが分厚いイメージがあります。オザンナの1stなんかも宗教的なコーラスワークが妖しくて素晴らしいですが、なんとなくそういうイタリアの血を引いてるように思えてなりません、ただの思い込みですけど。特にThe Death of Godsは前作のWelcome Deathをさらにオカルト・エピックに進化させたような大作で本当に素晴らしい…。また、後述しますがBulldozerはプレ・ブラックメタルバンドの中でもBathoryと同じくらい音楽的にノルウェーブラックメタルに影響を与えた(かわからないけど、直接音楽的にリンクすることをやってた)バンドだと思ってるんですが、The Final Separationでやってるドコドコ・ツーバスの上に歪ませたギターで表現された妖しいアルペジオを乗っける手法、これ完全に後のBurzumを先取りしてて凄い!Burzumってかなり突然変異的な部分が多い音楽だと思うけど、もしかしたらその元ネタのひとつはBulldozerなのでは?と思ったりもします(これも全く根拠のない妄想です)。上述した似非クワイアもブラックメタルでよく使われる手法ですよね。高音弦でのブロークンコードもやってますし。

他の曲は1stと同じく極上ロックンロールナンバーで構成されてますが、The Caveなんかはコードから外れたベースラインやクリーンギターの挿入など妖しさ満点。というか、本作はベースプレイが妖しすぎます。Ride Fast Die HardやSex Symbol's Bullshitなんかはは1stでのキラー曲直系の爆走ロックンロールナンバーですが、ベースプレイのせいか、はたまた全体的にケムい音作りのせいか、はたまた単純にジャケットのカラーリングに惑わされてるだけかもしれませんが、常に妖しい紫色の雰囲気です。個人的に大好きなNever Relax!はTank直系のロックンロールをシリアスにしたようなアルバムのテンションがピークに達する名曲で、2回目のサビがカッコよすぎる!ギターソロ明けのリフに戻るとこでおしっこ漏らします。

 

・3rdアルバム 『IX』

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3rdアルバムです。このアルバムからこのバンドはガラッと音楽性を変えスラッシュメタル/プレブラック路線に突き進みます。ツービートの速いリズムに単音トレモロリフ。とはいえあんまり似たバンドはいなくて、やっぱりプレブラックメタルって表現がしっくりくると思います。先ほども書きましたがBulldozerはかなり2ndウェーブのブラックメタルと近いことをやってると思ってて、アルバム全編でみられる単音トレモロリフもそうですが(IXのBメロでみられるクラシカルなメロディのトレモロリフなんかはかなりブラックメタル)、わかりやすいのはAbigailもカバーしてるHeaven's Jailじゃないでしょうか。ブラックメタルでよくある手法(そして突然変異的な手法)として歪ませたシャリシャリのギターでアルペジオおよびブロークンコードを鳴らす、つまりそれまでのエクストリームメタルでは排除される傾向にあった高音弦もちゃんと使った(つまるところ、普通の)コードワークってのがあると思いますが、この曲は初っ端からそれをやってます。この曲に限らずアルバムの至るところでこの手法が散見されます。Bathoryの3rdってシャリシャリのギターサウンドとかコードでのトレモロリフってのはやってたけど、これは案外やってなかったと思うんですよね。ノルウェーの人たちがどれだけ影響を受けてたかわからないですが、川嶋さんのIhsahnインタビューではBulldozerを勧められて聴いてたって話をしてたんで結構みんな聴いてたんじゃないでしょうか。Ihsahnも結構その手法を使う人の筆頭な気がします。

本作でのギターソロはたぶん彼らのキャリア中でも最強のメロデックさで、IXでの構築美溢れたギターソロやDesert!での燃えるツインリードはまさに極上です。Desert!のツインリードはいつか弾けるようになると思ってたんだけど、いまだに弾けません…。IXのソロは本当に名ソロだと思います。ソロが終わって一瞬静寂が訪れてからサビに戻るところ、本当にカッコよすぎますよね…。

The DerbyはBulldozerで最もキャッチーなアンセム。他には前作までのロックンロールな感触を残すIlona the Very Best、歌詞が最悪でサイコーなMysogynists、アルペジオを多用したリフとメロディアスなソロで昇天させるThe Vision Never Fadesあたりがお気に入り曲です。

あと、実は初めてキーボードをちゃんと導入したのはこのアルバムからです。チェンバロやチャーチオルガンの音色を選択してるのはいかにもイタリアって感じですね。とはいえ音質の向上もあって妖しさはほとんどなくなっちゃってます。AnthraxとかS.O.Dっぽいタテノリのビートダウンパートをちょこちょこ入れてるのが最大の原因な気もしますが…。

ちなみにドラマーは前任の"Don" AndrasからRob "Klister"に変わってますが、個人的には前任者の方が勢いがあって好きです。IXの初っ端から裏表ひっくり返ってるし……。彼の名前を冠した曲では散々な言われようでかわいそう。

あと、Abigailの曲展開はこのアルバムの曲展開をかなり参考にしてそうですね。Bメロがつなぎみたいになってるところとか。

 

・4thアルバム 『Neuroderili』

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ルーツオブブラックメタルとしても有名な4thアルバムです。このアルバム一番の特徴は大胆なキーボードの導入でしょう。前作でのキーボード使用は曲のアウトロ・イントロ的使用に留まってましたが、今回は思いっきり曲中の重要なファクターになってます。でも、インタビューによるとこのキーボードの使用はサタニックメタルや70'sロックからのインスピレーションではなくて、小室哲哉の影響らしいですが。AC wildはのちにユーロビートで大成功しますが、まさかこのアルバムの時期からそのへんの影響を受けてたとは…。ドラムも、一応メンバーはクレジットされてますが打ち込みですよねこれ、たぶん。こういうところからもクラブミュージックからの影響が伺えます。

とはいえ、音だけ聴いたらさっぱりそんなことは分からなくて、なんといってもタイトルトラックはキーボードの使用も含めて完全にブラックメタル!ギターワークもシャリシャリの音+高音弦を強調しててもろブラックメタルです。でも、キーボードの音色にクワイアとかストリングスじゃなくてチャーチオルガンを選ぶところがやっぱりイタリアです。

でも、タイトルトラック以外の曲は意外にもキャリアの中で最もスラッシュメタル然としていて、前作では速いパートはほぼトレモロリフで構成されていて、刻みリフはビートダウンパートのみで使用されてましたが、今回は速いパートもほぼ刻みリフです。Minkionsなんか明らかにベイエリア・スラッシュからの影響がモロ出しな曲ですね。でも、こんな曲でもちょっとCarnivoreのArmageddonを思わせるピアノによるちょっとした味付けがされてて、やはりキーボードが本作を個性的なものにしてます。Art of Deceptionは、前作で見せた爆走スラッシュを刻みリフで表現したような曲調からまるで様式美メタルのようなギターとキーボードのソロバトルに雪崩れ込む異形のナンバー。Illona Had Been Electedはキーボードを大胆にフィーチュアしてて、妖しいクリーンギターから曲が始まったりしてちょっと2ndの路線も思わせます。また、We are… Italian、Impotenceなんかの初期のロックンロール・ブラックメタルっぽさを思わせる曲も収録されてるのが面白いです。特にWe Are…Italianは1stアルバムに入っていてもおかしくないような極上のロックンロール・メタルパンク!3rdと比べるとわりと初期っぽい要素もあるアルバムだと思います。

ラストのWillful Deathも3rdでは一度根絶されてた、1st,2ndでの伝統に従ったような荘厳なスロー・ナンバー。でも個人的にこれはもうちょっと妖しさが欲しいところ。The Death of Godsの音でやってくれてたら…。

 

・ライブ盤 Alive… in Poland

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Abigailがオマージュしまくってることで有名なライブ盤。どの曲もかなりの熱量の演奏で、客の盛り上がりもアツいです。とくにアルバムでは打ち込みっぽいドラムの4th収録曲は生のドラム演奏だとやっぱり勢いが違いますね。Minkionsとかアルバムの数倍凄い。

あと、久々に聴き直してわかったのは、やはりIX(曲)のアルバムテイクの最初のドラミングは、意図的に頭打ちにしてるのではなく単純につんのめってるだけ、ってことです(このアルバムの一曲目IXでは普通に裏打ちで叩いてるので…)。ただ、個人的にはIXはフルで聴きたいなあ…あのギターソロが最高に好きなので。現在でもBulldozerのライブでは基本的にIXとDesertはメドレー形式でやるのが定番みたいですが。

Overkillのカバーもやってて、これは観客全員大合唱でアツい!Andi Panigadaってわりとクラシカルなプレイをしてるイメージですけど(インタビューによるとリッチー・ブラックモアの影響らしいです)、ブルージーなプレイもしっかり映えますね。

あとCD版ではLPより曲数が増えてて、2ndアルバムの曲を3曲やってます。中でもThe Final Separationはなんとキーボード入りでやってて、なんで初期Bulldozerにキーボードが入ってないんだ!という不満を少し解消してくれる嬉しいテイクです。

 

と、こんな感じでどうでしょうか。これでもしブルドルゼルのパロネタで会話を仕掛けてくるウマがこれから実装されても、多少はなんとかなるかもしれません。ちなみに私はもうしばらくウマにログインしていません。諸行無常…。

本当は復活作についても書きたかったけど、シルバーウィークも終わりそうなのでとりあえずこれで…。個人的に復活作はしょーもない曲もあるけど、Bulldozerが先んじて行っていたブラックメタルっぽい手法を、ブラックメタルから逆輸入して再解釈したような作品で結構好きです。

 

ちなみに、私は前回でも〜に影響を受けているに違いない、とか影響を与えているに違いないとかマニアぶっていろいろ書いてますが、すべて私の妄想なので、根拠はありません(さすがにインタビューとかは妄想ではないですけど。でもだいぶ読んだのが昔なので…読み漁ってるわけでもないし)。私は思い込みの激しいオタクなので、私に話しかけてきた女の子は全員私のことが好きだし、ブルドルゼルはブラックメタルに影響を与えているのです。次はお前に告白してやるぜ……。

 

サバト 全アルバム 感想

春だ!5月だ!GWだ!

GWといえば?……そう、Sabbatです。

 そういうわけで、最近サバトを聴き直してるんですが、もう…やっぱ好き❤︎になっちゃいますね。

で、サバトのアルバム全部について取り扱ってるブログってあんまないなとふと思いまして、せっかくなのでサバトのアルバム全部について感想書いちゃおうかと思い立ち、移動中とかにシコシコ書きました。もしよろしければステイホームのお供にでもしてください。

 

・盤外編①:80年代7inch Single

いきなり番外編で申し訳ないんですが、サバトのアルバムについて語るにあたって80年代の音源について触れないわけにはいかないなと思うので、80年代にリリースした7インチシングルについての書いていきたいと思います。

Sabbat

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記念すべき1st EPです。この時期のメンバーはGezol氏(Vo,B)、Elizaveat氏(G)、Ozny氏(G)、Valvin氏(Dr)のツインギター編成でした。その後のバンド史においても末長く愛されることになるBlack FireとMion's Hillの名曲二曲を収録。とはいえこの音源はだいぶイモい印象ですが、それゆえMion's Hillはこのバージョンが一番Manilla Roadとかのエピックメタルの感覚に近いかもしれません。久々に聴き直して思ったのが、Venomみたいなバンドをやろう!ってコンセプトなのにMion's Hillみたいな曲を正式な音源に収録することを選ぶセンスの凄さ。今でこそブラックメタルとエピックなヘヴィメタルの共通性は常識になってますが、それをこの時点で実践してるのは(たぶん無意識というか、バンドとしての路線が発展途上だったというのはもちろんあると思いますが)先見の明ありすぎだと思います。

 

Born by Evil Blood

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2nd EP。この作品からOznyが抜けトリオ編成に。ドラムはMagnesiumやG.A.T.E.S.で有名なゲゾルさんの弟、Samm氏。前作と比べて明らかにスラッシュメタルに接近した作品です。この時期(Envenom発表以前)のサバトの音楽性を私のポーザー・オブ・ポーザー・イヤーで評するならば、全体的にSlayerとSodomからの影響が大きく、遅いパートはCeltic Frostの影響もありそう。一曲で数曲ぶんくらい展開するドラマティックかつシアトリカルな曲構成はMercyful Fateからの影響ってな感じでしょうか。でも、変にテクニカルだったり性急になったりすることはなく、あくまでヘヴィメタルの心を忘れてないのが素晴らしいです。音楽的にはあんまりVenomっぽさはないような気はしますが、ヴォーカルはクロノスを意識してる部分もありそうです。素っ頓狂なハイトーンはトム・アラヤでしょうが。よくよく考えてみたら、Black FireもVenomってよりかはSlayerの1stに入ってそうな曲かも。

というか、この頃からドラマティックな曲展開が完成してるのが凄い。

あと、この前TwitterでゲゾルさんはカオスUKとか某Gも大好きだという話を見て驚嘆しましたが、たしかにPoison Childとか(次作の)Darkness and Evilなんかはモロにハードコアですね。

 

Desecration

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3rd EP。名曲Darkness and Evilを収録。基本的には前作と同じ路線ですが、Children of Hellのイントロなんかは完全にブラックメタルですね。ギターソロも最高です。Crest of Satanはミッドテンポで溜めてから劇的に爆走するサバト節が公式音源としては初めて炸裂した曲ではないでしょうか。アウトロも後のSatan Bless YouとかEnvenom(曲)に繋がる感じもあります。

 

Devil's Sperm is Cold…

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あまりにもジャケが有名な4th EP。私はこれで精液は英語でスペルマだって知りました。そしてこれが二曲入りながら、80年代のサバトでは一番の名作ではないでしょうか。80年代の曲は後にそのかなりが再録されてますが、このEPの曲に関してはダントツでオリジナルバージョン(これ)がカッコいいと思います。

A面は言わずと知れた名曲Hellfire。私がサバトで好きな要素のひとつとして、まるでヘヴィメタルの華であるギターに対抗するように(テクニカルという意味ではなく)主張しまくるベースプレイがあるのですが、Hellfireはその代表みたいな部分があります(ふつーあそこベースでハモるか!?)。B面のImmortality of the Soulはサバトの作曲能力がこれでもか!と炸裂した名曲。複雑かつシアトリカルな曲展開はまさしくブラックスラッシュ版Mercyful Fateだと思います。クリーンギターの使用はサタニックメタルの様式美ですよね。

あと、私はHellfireの"イビルデモンズソー‼︎‼︎‼︎"のヤケクソシャウトが大好きでして、上で音楽性はあんまVenomっぽくないと書いといてアレなんですが、作曲に関しては非常にクレバーでも、アートワークといい、こういう笑っちゃうような紙一重のアホさを決して忘れないところがこのバンドの非常に素晴らしいところであり、やっぱり根底にある精神はVenomなんだな、と思うところでもあります。

 

The Seven Deadly Sins

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90年発表5th EP。後に何曲にも渡って語り継がれるカナシバリシリーズの記念すべきPart1、Possessed The Roomを収録。数あるサバト節のひとつ、左チャンネルと右チャンネルで交互にヴォーカルがひょこひょこするやつはこれが初めて?また、B面は打って変わってコンパクトかつスラッシーな曲が収録されており、リフは彼らの中ではかなりテクニカルで、ヴォーカルも結構ハードコア(っていうかSlayer?)に寄せててシリアスな感じです(でもエンジェ〜!はやっぱりアホだ…)。

 

ここからアルバムについてです。

・1stアルバム『Envenom』

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91年発表1stアルバム。この作品からドラムがSamm氏からZorugelion氏にチェンジ。1stアルバムですが、音楽的には中期の妖しいブラックスラッシュ路線の片鱗は十分に見せつつわりと初期のスラッシーな部分も残っており、初期の音楽性と中期の音楽性のミッシングリンクみたいな立ち位置の作品な気がします。これはElizaveat氏の乾いたギターサウンドにも起因してるかも。とはいえ、前作で過去最高にスラッシュメタルに肉薄していたのが嘘のように今作ではスピード/ヘヴィメタルに回帰しています。当時はヴォーカルの変化に相まってデスメタル化したって言われていたらしく、実際ヴォーカルはロウなスタイルに変化してますが、曲にだけついていうとEvil NationsやDevil WorshipなどのナンバーはBorn by Evil Blood以降では初と言っていいほどヘヴィメタル(どうでもいいですが、今聴き直すとEvil Nationsって明らかにWelcome to Hellを意識した曲ですね。しかも全然Venomっぽくなってないところが面白い)。Satan Bless YouやReek of Cremationなどのスピードナンバーも前作と比較すれば一聴瞭然なほどにスラッシュ感はなくなってます。Sighの川嶋さんはセカンドウェーブのブラックメタルの誕生を過激化したエクストリームメタルシーン内での初期スラッシュへの回帰と表現してますが、この作品でも似たようなことが起きてるんではないでしょうか。より過激さを求めつつ、同時にヘヴィメタルの基礎にこだわる姿勢はまさしくブラックメタルですし、前述したブラックメタルヘヴィメタルの共通性を今作からは意識して表現してるように思えます。今作からキーボードを導入してるのも見逃せません。それと、CarcassvoiceやKing of HellはBathoryからの影響が顕著ですね。特に後者はモロです。またCarcassvoiceは、中期サバトでよく多用されるデス声とヤケクソハイトーンの掛け合い(そして僕はこれがたまらなく好き)をおそらく初めて実践したナンバーとしても重要でしょう。ギターとベースを左右のパンに振り分けて、曲の途中で入れ替えたりする手抜きなのか確信犯なのかわからない遊び心もこの曲がたぶん最初。中期サバトのアルバムには一曲は絶対こういう曲があります。こういう小さなこだわりも私は死ぬほど好きなのです。

また、この作品から彼らは意識的に和旋律をメロディに取り込み始めていると思いますが、特にインスト曲のDead Marchは和旋律を大胆にフィーチャーしたたぶん初めての曲。The Dwelling以降のツインリード曲展開(後に詳しく解説)のプロトタイプみたいな意味もありそうです。

Deathtemptationは最初聴き直したときはCeltic Frostっぽいと思ったもんですが、今聴き直すとなんかZOUOっぽさもあるかも。というか、曲としての完成度高すぎ…。

とはいえ一番好きなのはDevil Worshipです。妖しすぎるしメロすぎる……。のちのThe Dwellingに通じる感覚もある名曲だと思います。

 

・2ndアルバム『Evoke』

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92年発表2ndアルバム。今作から私が人生で一番好きなギタリストの1人でもあるTemis Osmond氏がElizaveat氏とバトンタッチで加入します。サウンドはどちらかといえば尖っていて、ソロのフレージングもペンタトニックスケールやラン奏法を多用するオーセンティックなスタイルだったElizaveat氏と比較して、Temis氏は丸く、太く、粘ついた妖しさ満点の音作り。ソロのフレージングも、Elizaveat氏を意識しつつもよりネオクラシカルだし、トリルを多用したりして妖しすぎる。ゲゾル氏曰く彼は「オジー・オズボーンランディ・ローズにならケツを貸してもいいという人物」らしいですが、実際ランディ・ローズのプレイをより邪悪にしたようなスタイルです。それとTemis氏のギターサウンドの特徴といえばリバーブがハチャメチャにかかっていること。音源でもソロなんかめちゃくちゃリバービーですが、当時のライブ映像を見るとそもそもギターにリバーブをめちゃくちゃかけていてびっくりします。私がリバーブ信者になった原因の1人は間違いなくTemis氏でしょう。

音楽的にいえば、今作からサバトは完全に中期の音楽性に舵を切ったと言えるのではないでしょうか。デスメタル的なロウネスと、Mercyful FateというよりかはKing Diamondからの影響が強そうな、シアトリカルなサタニック・ヘヴィメタルを完全に融合させていると思います。あと、変わらずCeltic FrostやBathoryからの影響も大きそうです。比率でいうと7:3くらいな感じがします。なんとなくですが、この時期の彼らのグルームネスはデスメタルというよりSamaelとかのCeltic Frost由来のブラックメタルに近い気がするんですよね…。感覚としては結構ギリシャ系とも近いように思うんですが、スピード/スラッシュメタルからの影響が顕著に表出してるところが違うところかも。リフ作りを見てみると、Slayer影響下のトレモロリフは散見されるものの、80年代の作品に見られたようなスラッシュメタル的アプローチのリフは大きく減っていて(Metalucifer and Eviluciferくらいでしょうか)、どちらかというとヘヴィ/スピードメタル的なアプローチで曲作りがなされているように感じます。キーボードの使用も前作より大胆で、キーボードによるインストDance Du SabbatからEnvenom Into the Witches Holeの流れは完璧。で、この曲やBeyond the Riverなんかで特徴的なのはブロークンコード(っていうのかな?要するにFreezing Moonのイントロみたいな手法)の使用で、この音楽性でやられると完全にセカンドウェーブ・ブラックメタルの手法に聴こえます。とはいえ92年発表の作品だし、前にBloody Countessとかカナシバリでも似たようなことやってるのでサタニックメタルやランディ・ローズ由来だとは思いますが。私は当時、こんなヘヴィメタルブラックメタルの融合なんてアリなんだ!と衝撃を受けたのを覚えています。また、アコギの使用も本作からですね。中期サバトはアコギやキーボードの使用などのブラックメタルなアプローチを特にこだわって実践している時期で、そこが好きなところです。というのも、そういう飛び道具的な手法を使いつつも、下地の音楽性がヘヴィメタルやスラッシュ/スピードメタルなところが実に非北欧的で、何度も書きますがやっぱりギリシャ系や非モテデスメタルっぽいんです。といっても、時系列的にはサバトを聴いたのが先ですが。

それともう一つ書くべきことは、この時期はヴォーカルワークを相当こだわっているということです。そのこだわりが頂点に達してるのがFetishismとThe Dwellingだと思いますが、本作においても、デスメタル的なグルーミィな吐き捨て(グロウルではない)を始めとして、ウィスパーヴォイス、ヤケクソなハイトーンなど多彩なヴォーカルスタイルで曲をシアトリカルに盛り上げています。また、同じロウな吐き捨てでも何重にヴォーカルを重ねて、唸ったり叫んだりするトラックを入れることでまさしく魔女の饗宴のような妖しく不気味な雰囲気を作り出してます。上でKing Diamondからの影響が大きそうと書きましたが、この部分は確実にその影響だと思います。曲調に合わせて使い分けるってよりかは、コーラス的な足し算で別のスタイルのヴォーカルを重ねてくのがKing Diamondっぽい。ここまで書いてて気付きましたが、Mortuary Drapeは非常に中期サバトに近いスタイルですね…。King Diamondからの影響は大きいだろうし、にも関わらずメインのヴォーカルはデスメタルっぽいし。シアトリカルな部分のハイライトはやはりHellhouseでしょう。この曲はなんとバラードですが、ヴォーカルはデス声、ウィスパー、ハイトーンとてんこ盛りで妖しすぎます。バラードみたいな曲をこういう風に料理してしまうのも、僕の中では非常にブラックメタルを感じるところです。Total Necro…もシアトリカルな名曲ですが、加えて今後のサバトでよく行われる、ギターソロとしてではなく曲の展開として、大幅な展開の変化とともにいわば曲中のインストゥルメンタル的にツインリードを使う手法が初めて出てきた曲でもあると思います(正確にはImmortality of the Soulでその片鱗はあらわれていますが)。

 

・3rdアルバム『Disembody』

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93年発表3rdアルバム。てか、中期サバトはクオリティを衰えさせることなく毎年アルバムをリリースしてるのが凄いですね。本作はFlower's RedやMetamorphosisなどのシアトリカルなナンバーもあるものの、前二作と比べると曲も短く比較的ストレートな作風だと思います。一曲目のSeven Crosses of Damnationなんかはかなりストレートなスラッシュメタルですね。とはいえ、こういうストレートな曲でもイントロのギターソロを2本重ねてちょっとだけ違うフレーズを弾いてみたり、ヴォーカルを左右かやひょこひょこさせてみたり、小さな(そして無意味な?)こだわりを忘れないところがやっぱり素晴らしい。Metamorphosisは本作で最もシアトリカルな曲で、クリーンギターのイントロからちょっとCeltic Frostっぽいミッドテンポの曲に雪崩込みますが、その繋ぎの部分のヴォーカルはシアトリカルというよりもはや演劇です。アホです。

また、Unknown MassacraはなんとD-Beatナンバー!たぶんMasterとかのD-Beatデスメタルからの影響下な感じがしますが、こういう曲をやっちゃうところもMortary Drapeっぽいかも(BOYのレビュー受け売りすぎる………)。また、実は前作からヴォーカルをとっていたテミス氏は今作からはっちゃけて、King Diamondとウド・ダークシュナイダーの合いの子のようなキョーレツな素っ頓狂・ハイトーンスタイルに変化しています。Evoke the Evilは今後のサバトの売りのひとつとなっていくゲゾルさんのロウ・ヴォーカルとテミス氏の素っ頓狂ハイトーンのツインヴォーカルの妙を確立したナンバーで、後半の妖しすぎるツインリードは前作収録曲Total Necro…の発展版のように聴こえます。また、ゲゾルさんのヴォーカルスタイルも若干変化していて、今作からデスメタル的な唱法に地声を混ぜた、よりRawな衝動を感じさせる手法になっていると思います。

ちなみにこの作品、内容が再発で結構変わってまして、CDだとHangarian Death No.5を収録したバージョン(オリジナル版と19年再発NWN!盤)とHangarian Death No.5の代わりにSatanasを収録したバージョン(05年・14年再発IP盤、17年再発Fallen Angels盤)のふたつがあります。で、ややこしいのは05年IP盤の曲目リストにはなんと誤植でHangarian Death No.5の文字もあるのです!私はまんまと引っかかりました。カンベンしてくれ〜。ちなみにHangarian Deathは曲名からもわかる通りハンガリー舞曲第五番(ヘパリーゼのCMの曲)のアレンジなんですが、これがめちゃくちゃカッコいいです。確かみてみろ!

 

・盤外編②:Black Up Your Soul…

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中期サバトの初期曲再録アルバム第一弾です。アルバム尺ですが、再録盤なので番外音作りや演奏はわりと前作Disembodyと地続きで、よりロウ・ダークネスに包まれた初期曲を楽しめます。とはいえ、一曲目Welcome to Sabbatは初めてイントロとしてではなく曲中でキーボードが登場した曲。この曲はBloody CountessやDesecrationにも収録されていますが、個人的にはこのテイクがダントツでカッコいいと思います。イントロの役割としても、この音源でのWelcome to Sabbat〜Black Fireが一番繋がりとしてマッチしてるかなと個人的には感じます。およそ14分にも及ぶMion's Hill再録はヴォーカルと前半のギターをテミス氏が担当しているバージョン。再録アルバム第二弾の…for Satan and Sacrificeにはゲゾルさん(Vo)バージョンが収録されてますが、どちらも後半では延々とElizaveat氏とテミス氏のソロバトルを堪能でき、まるでサタンオールスターのよう。また、90年代の再録アルバムにはそれぞれ一曲ずつNWOBHMバンドのカバーが収録されていますが、本作ではQuartzをカバーしてます。そしてこのカバーが素晴らしい出来で、泣きまくるテミス氏のギターで思わずガッツポーズ必至です。このカバーはBOYのレビューでもメタルパンクの先駆けと評されてましたが、このカバーと(ゲゾル氏ヴォーカルバージョンの)Mion's Hillの再録は、メロディアスでエピックなヘヴィメタルをロウなヴォーカルと演奏で表現する、後のブラッケンド・ヘヴィメタルやメタルパンクの先駆けとも言えると勝手に思ってます。それと、完全に個人的な話ですが、私がメタルコアを好きになった根底には確実にこの時期のサバトのブラック・ヘヴィメタルがあります。それこそ、この音源でのQuartzカバーは、NWOBHM的なしっとり感と暴力性・邪悪さの融合という意味では某バンドの2ndっぽさもあるかもしれません。この感覚って確実にメロデスとは違うものだと思います。

そしてそれとは対照的に、本作での再録版Darkness and Evilは、ロウなヴォーカルも相まってかなりクラスティな仕上がり。中期サバトのヴォーカルってだいぶクラストっぽい感じもあると思うんですよね。サバトとスプリット出してたチリのBomberなんかはまさしくこの辺の感覚を目指してるように思います。

 

 

・4thアルバム『Fetishism』

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94年発表4thアルバム。かなりストレートな作風だった3rdアルバムと比較して、本作はほとんどがミドルテンポ曲のどっしりした作風です。しかしながら、中期サバトがこれまで実践していた妖しくシアトリカルなサタニックさやブラックメタル的な手法がこれでもかと爆発した名作だと思います。まず印象的なのは、Temis氏のプレイが非常にロウになっていること。前作まではわりときっちりしたプレイをしてる印象でしたが、今作でははっちゃけて非常に荒いプレイになっています。Disembody to the Abyssなんかに代表されるように、速い曲でもスラッシーな刻みは減少していて、刻むリフもかなり荒く刻んでます。あと、ギターの音作りも以前よりちょっとシャープな感触に変化してますね。この荒いプレイとちょっとシャープな音作りはそのままThe Dwellingへと引き継がれます。「サバトの本質はミドルテンポ曲にある」とゲゾルさんが何かのインタビューで言ってましたが(たしかカルマグマサカーについてきた冊子かな?)、In Trust We Satan、Satan is Beautifulはまさしくその言を体現してるような味わい深いミドルテンポナンバー。特に妖しすぎるアコギのイントロから始まり、中盤で爆発的に疾走する#3は大名曲。緩急の付け方が素晴らしいといえばBurn the Churchも忘れられません。ドゥーミーな曲調から中盤でスピードアップする際の鬼気迫るヴォーカルはいつ聴いてもションベン漏らします。この曲はLong Way to the Beyondという曲名でほぼ完成系の状態で86年に演奏されてる音源が初期音源集Bloody Countessに収録されているんですが、86年にこんなドゥーミーな曲を演奏するセンス凄すぎ(しかもこのテイク、ヴォーカルはなんとSamm氏!)。

しかしながら、このアルバム一番の聴きどころはやっぱりインスト曲Sausine〜Elixir De Vieの流れでしょう。この二曲は大胆なキーボードの使用も相まって、もう完全に辺境ブラック!まるで中世の暗黒時代を思わせる雰囲気は、MystifierのBeelzebuthとかああいう感覚に近いです。でも作曲の方法論は完全にサバトで、Sausineでは前作収録Evoke the Evilで見せた妖しくアトモスフェリックですらある大仰なツインリード展開に、さらにチャーチオルガンなどの妖しすぎる音使いのキーボードをプラスすることで恐ろしく呪術的な雰囲気を生み出しています。そこから美しすぎるギターソロに雪崩れ込む展開は鳥肌モノ。続くElixier De Vieは、前々作収録Total Necro…や前作収録Flower's Redで表現したKing Diamond影響下のシアトリカルさを100%呪術的に振り切った名曲。邪悪なゲゾルさんのヴォーカルにかぶさるハイトーンが妖しすぎる……。使ってるのはオペラ声ではなくハイトーンですが、ちょっとMystifierの3rdに近いような雰囲気も感じさせます。アウトロにチェンバロが重なってくるのも非モテ心を非常にくすぐられて最高。

また今作はテミス氏作曲のナンバーが素晴らしい出来で、Elixier De Vie同様ギターソロが美しすぎなLost in the Grave、正統派ヘヴィメタルとして完璧なGhost Trainはいずれも必聴の名曲です。

 

・盤外編③:…for Satan and Sacrifice

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こちらも番外で、Black Up Your Soul…と対をなす、90年代の再録アルバム第二弾。とはいえ音作りはBlack Up Your Soul…とも直近のアルバムFetishismとも異なるもので、確信犯的にチープさを狙った非常にロウな音作り。というか、かなり某バンドの1stっぽい……。とはいえこれを初めて聴いたときの私は某バンドなど聴いたことがなかったので、Cirith Ungolの2ndみたいな音だな〜と思った記憶があります。また、今作はBlack Up Your Soul…と異なり新曲が二曲収録されています。

オリジナルはBloody Countess収録のThe Egg of Dappleは原題"まだらの卵"で、再録盤の中でSabbat収録曲を除けば唯一サバトがまだ完全にスラッシュ化する前の曲の再録。サビでクリーンヴォーカル(?)が重なったりして、なんとなく次作The Dwellingへの片鱗を感じさせます。サビでゲゾルさんがデスメタル風ロウ・ヴォーカルのままメロディを歌っているのもメタルコアっぽくて興味深いです。新曲の一つであるGideonはそのままThe Dwellingに収録された様式美・サタニックメタルナンバーで、Black MetalラストのAt War with Satanのように予告編としての意図で収録したのかもしれません。もう一つの新曲Acid Angelは旧ギタリストOzny氏がヴォーカルでゲスト参加しており、ゲゾルさん曰くVenomを意識した曲だそうです。たしかに言われてみればTeacher's PetとかSchizoとかに近い感じのやつですね。こちらに収録の再録Mion's Hillはゲゾルさんヴォーカルで前半のギターソロはElizaveat氏。後半のソロはBlack Up〜収録版と内容は同じ(だと思う…)ですが左右が逆になってますね。Black Up〜の項でも書きましたが、テミス氏のVoがキョーレツに素っ頓狂ではあるけどわりとヘヴィメタルの形式に準じているのに対し、この時期のゲゾルさんのヴォーカルは完全にロウなので、今作収録のMion's Hillはモロにブラッケンド・ヘヴィメタルやメタルパンク/メタルコア感があって最高です。NWOBHMカバーはSatanのKiss of Deathを収録。前作のQuartzカバーがそのしっとり感も相まってまるで某バンドの2ndすら彷彿させたのに対し、本作のカバーはもっと直球にメタルパンクっぽいかも。

 

・5thアルバム『The Dwelling』

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永遠を手にしたアルバム。これほどのものはもう二度と生まれない。メタラーだけではなく、音楽を愛する人全てに触れて欲しい。The Dwellingは些細な感情を挟み込む余地さえもなく、恐ろしいほどまでに完璧。このバンドに神が降臨したとしか考えられない。それとも悪魔と契約したのか。

…ってことで個人的なサバト最高傑作である96年発表5thアルバム。墓まで持ってくアルバム堂々一位です。中期サバトがこれまで実践してきたシアトリカル・サタニックメタル/ブラックメタル的アプローチは前作Fetishismで一気に爆発したわけですが、それがさらに深化して完璧な形で表出したのがこのアルバムだと思います。

まず、彼らの創作意欲が爆発しすぎた結果か、なんと今作は一曲のみ収録で、トータルランニングタイム約一時間。一時間もの大曲を作ってきてしまいました。しかもその一時間中のすべてが黒いというより紫色な瘴気が漂うような雰囲気に包まれており、サバトでも最も妖しく呪術的な作品になっています。

今作で顕著なアプローチを具体的にまとめると、

アコースティックギターやキーボードの使用などのブラックメタル的な手法

②多種多様なヴォーカルワークによるKing Diamondっぽいシアトリカルな表現

③メロディアスなギターソロ(しかもヴォーカルパートにも重ねてくる)

④初期曲Immortality of the Soulなどに顕著な一曲の中に複数曲ぶんの展開があるような複雑な曲構成、及び3rdアルバム収録Evoke the Evilで表現されていたような、大幅に曲展開を変えてのほぼインスト的なツインリードの挿入

⑤前作(Fetishism)からよりいっそうロウになったギタープレイ・ヴォーカル

の5項目になるかと思います。

まず①に関しては、イントロから明らかなように過去最高にキーボードの使用が目立ちます。しかも面白いのが、いままでの音選びはピアノの他にはチャーチオルガンやチェンバロなどのクラシカルなものを使いサタニックメタルの王道を踏襲していたのに対し、今作ではピアノ以外の音色としてダーク・アンビエントで使われるようなチープで無機質なシンセ音をチョイスしています。この非メタル的な音選びのおかげで全編にロウかつアトモスフェリックな雰囲気を醸し出すことにさえ成功していますが、音色がチープなため後のアトモスフェリックブラックメタルのような多幸感ある感覚はなく、あくまで荒涼としているのが素晴らしいです。アウトロなんかはもう完全にアンビエントブラックメタル。ここぞ!という時に登場するピアノは、ジャッケットアートのような中世暗黒時代の雰囲気を演出していて最高。というか、Fetishism〜The Dwellingは、使用してる音階はオリエンタルな和旋律なのに、同時に中世ヨーロッパを思わせるクラシカルな雰囲気をも漂わせてるのが凄すぎます。本作のクラシカルな部分の最たる部分が中盤においてアコースティックギターで奏でられるワルツの旋律で、美しすぎて涙がちょちょぎれること請け合いです。

②に関してですが、本作はとにかくヴォーカルワークが凝りまくってます。ブラックメタルなヴォーカルを中心に(本作のゲゾルさんのヴォーカルはデスメタルというよりブラックメタルのそれに近く、たまに音が割れたりするのも含めてめちゃめちゃクオーソンでカッコよすぎる!過去最高にテンションが高くて燃えます)King Diamondっぽい妖しいハイトーンやウィスパーヴォイス、さらには最初期を思い出させるジャパメタっぽいクリーンヴォイスなど、様々なスタイルの歌唱が随所に挿入され、時には違うスタイルの歌唱でハモったりもします。16:00あたりの部分なんか妖しすぎる……。そして、メインヴォーカルも含めてその全てで非常に演劇的な歌唱表現をしており、まるで不気味な物語の語り部のようにリスナーに迫ります。こういうところもKing Diamondっぽいというか、その影響が今作で最も大爆発してるのではないでしょうか。とくにハイトーンでのハモリはだいぶクワイアっぽくて、これは完全にKing Diamondです。あと、これはどうでもよさそうに思えて非常に大切なところですが、本作のヴォーカルには異様にディレイがかかっており、これが妖しい雰囲気を形作るのにめちゃくちゃ貢献しています。

③は②とも繋がる部分なんですが、この作品はヴォーカルだけでは飽きたらず、ギターソロでもシアトリカルに曲を盛り上げまくります。当時リリースされた際の帯の煽り文句は「サバト 旋律のB級ホラーコンセプトアルバム!」だったらしいので、本人たちも確信犯だったのだろうと推測しますが、本作はサバトで随一にメロディアスなアルバムでもあり、テミス氏のギターソロはどれも妖しく美しいです。しかも、ヴォーカルパートとギターソロパートを完全に分けておらず、ヴォーカルがギターソロを盛り上げ、ギターソロがヴォーカルを盛り上げるような場面が多々見られるのが素晴らしすぎる。その際たる部分がイントロでしょう。アトモスフェリックなキーボードが鳴り続ける中、トライバルな演奏から1:00ほどになると一回目のギターソロに雪崩れ込みます。その後もう一度トライバルなパートに戻り、1:30ほどから2回目のギターソロに突入と同時にヴォーカルも入ります。しかもここのヴォーカルが、いきなりブラックメタル・シャウトとジャパメタ歌唱の二重になっています!これだけで何か壮大な物語の序章が語られているのがわかりますが、このヴォーカルの裏で泣きまくっているギターソロが完全にヴォーカルの盛り上がりと呼応していて素晴らしい…カッコよすぎます……!!これぞ、シアトリカル・ブラックメタルの極地です。ちなみに盛り上げまくる演奏のせいで壮大っぽく聴こえますが、歌詞はかなりしょーもないです(無限にダジャレを連発している)。他にもいくつかこういう部分があるのですが、個人的にいちばん好きなのは42:45あたりの鬼気迫るシャウトからギターソロに雪崩れ込むところ。研究室でこれ聴いてたとき、このパートで思わずア………フ!!!!と叫んでしまいました。それと、Gideon(…for Satan and Sacrificeにも収録。16:36あたりからのパート)なんかはまるでKing DiamondのDressed In Whiteを思わせるツインリードが印象的な正統派メタルパートで、こういう様式美メタル的な曲をアルバムに収録したのはこれが初めてではないでしょうか。ていうか、Dressed In WhiteのヴォーカルワークはまさにThe Dwelling(というか中期サバト)っぽいですね。

④について、先程のギターソロとは別に、本作では数々の壮大なツインリード(というか、リードギターとリードベース?)のインスト・パートが曲展開として組み込まれています。これはおそらくEvoke the Evilなどで実践していた手法が最大限に爆発した結果だと思われます。そしてこの要素は後期サバトにおいてさらに深化を遂げることになります。面白いところは、ツインリードパートになるとガラリと曲展開が変わるのに、最後にはちゃんと元の曲展開に戻ってこようとするところでしょうか。この辺のバランス感覚が素晴らしいと思います。それと、最初の方でゲゾルさんのベースのギターに対抗してる感じが好きと書きましたが、今作のリードパートではベースも全然ギターと同じフレーズを弾いて(というかなんならベースの方が弾きまくってるくらい)て最高です。本来リードギターの裏ではベースはコード感を保つためにバッキングに徹するものですが、本作でのベースはバリバリにリード楽器です(というか、サバトのこういうパートでは基本そうだけど)。普通そんなことをしたらコード感がなくなってスカスカになっちゃうはずですが、サバトはなぜか全く気になりません。彼らの魔力は恐ろしいです……。

また、本作の曲構成力には目を見張るものがあると思います。そもそも一曲で一時間のものを飽きさせず聴かせるのが凄すぎますが、細かい例をあげるなら、例えば5:17あたりからについて。それまでの爆走ブラックスラッシュ展開から一転してシンセ音を使ったアトモスフェリックなパートに移り、軽くギターソロ。かと思えば突如シャッフルビートの正統派メタルなバッキングになり、ソロも一気にメタリックに盛り上げます。かと思えば先ほどのアトモスフェリックパートに戻りますが、今度はキーボードがピアノに変わっており、演奏はどんどん盛り上がっていく。そこでさらにギターソロ、ブラックメタル・シャウト、ハイトーンヴォーカルが重なってきて、もう何が何だかわからないくらいに盛り上がって最初のパートが終了。文字で説明されたところで何が何やらさっぱりだと思いますが、要するにフリ・タメからの盛り上げが絶妙に上手いと思うのです(これは先程紹介したイントロにも言えることですね)。私は音楽的知識が皆無なので、フリ・タメとかいうアホみたいな表現しかできません。最初に軽くクライマックスのパートを振ったあと、一旦タメのパートを挿入して焦らしてから本格的にクライマックスに突入しています。加えて凄いところは、ヴォーカルをクリーンヴォーカルと重ねることによってイントロでの伏線も回収してクライマックス感を上げ、曲に一区切りがつくということを表現してるところ。すげー…。これを最初の10分でやってのけるのはとんでもなさすぎです。

⑤がこれまた面白いところで、本作はサバト史上最もインテレクチュアルな作品であると同時に、最もロウ・パワーに溢れる作品でもあります。まずギタープレイについて、前作から減少しつつあったスラッシーな刻みリフが本作ではほとんど見られなくなっており、本作のほとんどが開放トレモロおよび熱血ヘヴィメタリックなリフで構成されています。荒々しく、時折ハードコアを思わせるほどのロウなギタープレイは、本作をブラックメタル、もっと言えばBathoryの3rdを最も想起させる作品にも仕上げていると思います。途中モロ13 Candlesなパートも出てくるしね…。ヴォーカルも今までで最もロウ・パワーに溢れておりめちゃくちゃ邪悪。上でも書きましたが、今作のヴォーカルはデスメタル的なロウネスをほぼ捨て去っており、完全に感情に任せて吠えまくるスタイルにシフトしているので、そこがまたBathoryを想起させる部分になっています。また、それぞれの演奏だけでなくアンサンブルもロウというか、かなり自由度の高いものになっているのも面白いところ。ヘヴィメタル、とくにエクストリームメタルは本来リフで曲が進行するので、各楽器陣(とくにギター)の演奏の自由度は限りなく低いはずですが、本作は"だいたいで"フレーズが決まっていると思われる箇所も多く、70年代的なジャム感も感じさせます。つまり、本来ギターがリフを弾く場面でもハチャメチャやってたりするってことです。これはブラックメタルスラッシュメタルとしては異様なことではないでしょうか。とくに9:30からのパートなどは、明らかにスラッシュメタルな曲調なのに、リフを刻まないどころか明らかにその場の思いつきでリフを変えてたりしてハチャメチャです。ヴォーカルもテンションが上がりすぎて適当になってたり、時には意図的にテキトーに歌うパートがあったりしてハチャメチャ(34:28あたりからのパートのサビ部。完全にアホです)。このIQの高さとIQの低さの完璧なバランス感覚もサバトがずっと実践してきたことだと思いますし、本作がその極地であると言えるのではないでしょうか。

好きすぎてアホみたいに長くなってしまいましたが、私の人生を終わらせた戦犯アルバムのひとつであるので許してください。

 

・6thアルバム『Karisma』

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99年発表6thアルバム。おそらく彼らの中で最も有名だと思われる超名曲、亡霊侍を収録。僕が初めて聴いたサバトもこれでした。前作The Dwellingで彼らが目指していたであろう(と勝手に妄想している、俺は桐生院)シアトリカル・サタニック・ブラッキングヘヴィメタルを究極の形まで完成させてしまったからか、今作からその音楽性を大きく変化させています。後期サバトの幕開けです。以前と比べて変化した部分として、まず最も大きいのはヴォーカルでしょう。今までのエクストリームなスタイルを完全に捨て去り、80年代でのクロノス影響下っぽいスタイルへと回帰しています。しかし80年代ではほぼ確信犯的にヤケクソ気味だったのに対し、後期サバトではあまりヤケクソ感はなく、まるで魔女が歌っているかのようなおどろおどろしいスタイルになっています。しかも今作に関しては歌詞がほぼエセ中国語なため、前作が中世の黒魔術師ならば今作はまるで中国のインチキ占い師が歌っているよう。時折飛び出す素っ頓狂なハイトーンもエセ中国感満載な胡散臭さを演出しています。音質も以前と比べめちゃくちゃシャープかつクリアになり、妖しさは半減してしまいましたがよりダイナミックなサウンドに。

作曲の面に話を移すと、今までも意識して和音階をメロディに使ってきた彼らですが、今作からよりそれが顕著に、言ってしまえばわざとらしさを感じるほどになっています。個人的な妄想ですが、中期まではサタニックな表現・音階の延長線上として和音階を使用していたのに対し、後期からはより明確にジャポネスクなオリエンタリズムを表現しようとしているように感じます。それによって、妖しい西洋魔術のようだった前作までと違い、今作からは胡散臭〜い東洋魔術が演出されてます。というか、後期サバトの音楽性を一言で表すなら"胡散臭い"、この一言に尽きると思います。

それともう一つ書いておきたいのが、前作The Dwellingで完成させたツインリードで曲展開手法が後期ではさらに深化をとげて使われまくっているということです。中期サバトまでで(The Dwellingを除いて)最も複雑な構成の曲であると思われるImmortality of the Soulと本作収録の魔窟を比較してみるとその差は瞭然で、間奏部分を前者はリフ主体+そこに乗るギターソロで曲を展開していくのに対し、後者では明らかにリードギターによるインストで曲を展開していく手法に変化しているのがわかります。Fetishismまでは前者の手法が使われていましたが、The Dwelling〜後期以降はリードギターインストで間奏部分を展開していくのにこだわっているように思えます。魔窟や破流魔化貪、次作収録のNekromantikの間奏部分なんかは、そこだけでひとつのインスト曲になってしまいそうなほどの完成度で必聴です。

どうでもいいですが破流魔化貪は実は彼らの中ではかなりVenomっぽいナンバーでもあると思っていて、ちょっとAcid Queenっぽいかも。しかし中盤から超オリエンタルな東洋魔術展開になってしまうのが面白いところ(Baltic Harmageddon収録のIncubus Sucubusも同様の展開の曲で必聴です。というか、この音源収録の二曲はめちゃくちゃVenom!!!!!)。

ここまで後期サバトとひとまとめにしてきましたが、正確には本作と次作Satanaswordではさらに音楽性に変化があると思っています。というのも、本作は結構The Dwellingを引きずっているところもあるのか、ほとんどスラッシーな刻みリフが登場せず、単音トレモロかコード掻き鳴らしリフで曲が作られていて結構ブラックメタルっぽいです。次作以降はもっとスラッシュメタルに回帰しており、そういう意味では今作もEnvenomと同じように中期と後期のミッシングリンク的な側面もあるかも?唯一大蛇だけは次作に繋がるスラッシーな曲で、次作はこの曲を発展させていったような印象も覚えます。

ちなみにこの作品実は英語版も出ていて、こっちの亡霊侍はヴォーカルが完全にヤケクソなアホさに振り切っていて最高です。

 

・7thアルバム『Satanasword』

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00年発表7thアルバム。相変わらず和旋律マシマシで、前作で確立したうさんくさ東洋魔術・ブラッケンドスラッシュメタル路線が今作でも存分に披露されていますが、前述したように今作からはさらにスラッシュメタル色がグンと大きくなっています。80年代のスラッシュ路線に大きく戻ったようにも感じますが、80年代と比べるとかなりメロディアスで、原点に戻りながらもよりヘヴィメタルの心を大切にしているように感じます。

あと、刻みが80年代の直線的なトレモロではなくちょっとベイエリアっぽいザクザクした刻みになってるのが面白いところ。でもアメリカンな感触は皆無です。

ラストに大作が二曲待ち構えてますが、音楽性がスラッシュメタルに回帰したからか全体的には比較的ストレートな曲が並んでいる印象を受けます。ストレート曲部門では、名曲CharismaとAngel of Destructionがやっぱり聴きどころで、東洋の神秘と超キャッチーなサバトスラッシュメタルが見事に融合した名曲。Kiss of Lillethなんかはサバトお得意のシャッフルビート・スラッシュメタルの妙が久々に聴けるナンバーですね。後半の大作DraculaとNekromantikは前作の破流魔化貪や魔窟を思わせる中盤ツインリード展開を有した曲で、どちらも素晴らしい出来。特にDraculaのBathory影響下の荘厳な曲調から中盤のネオクラシカルな疾走パートへ一気になだれ込むドラマティックな展開は本作一番の聴きどころ。この曲のツインリードはカッコよすぎます。Nekromantikは2nd収録Hellhouse以来の妖しいバラードですが、前作収録の魔窟に勝るとも劣らない劇的な曲展開にはただただ拳を握りしめることしかできなくなります。

ただ今作は音がちょっと微妙で、さすがにクリア&シャープすぎる印象かも…。ベースの音がクリーンで角張り過ぎてるのがな〜。

ちなみにリリース当時ではCD盤とLP盤で収録内容が異なり、LP盤ではJealousy CarnageのかわりにSelfish Devilを収録。私はLP盤を持ってないので聴いたことないですが…。

 

・8thアルバム『Karmagmassacre』

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03年発表8thアルバム。テミス氏が参加した最後のアルバムでもあります。前作ではまだ見られた大作主義が今作ではほとんど息を潜めており、ストレートなスラッシュメタルナンバーがアルバムのほとんど占めています。一曲目の衝撃度こそ前二作に劣りますが、後期サバトでも演奏のテンションは最高潮で、スラッシュメタルとしてはサバトの作品の中でも最高峰ではないでしょうか。また、曲がストレートになったとはいえ曲の構成力は全く衰えておらず、むしろ曲のドラマティックさを保ったまま曲をコンパクトにまとめることに徹しているように思えます。

また、前作よりもさらにスラッシーになっていると同時に、前作よりもさらにヘヴィメタリックなメロディにも溢れており、テミス氏のギターソロはどの曲においてもサバト史上で白毫の出来。前作が妖しさとメロディの中間のようなプレイが多かったのに対し、今作ではよりストレートにメロディアスなプレイを心掛けているように感じられます。あと、本作のギターソロは妙に浮遊感ありますね。

加えて、Demonic Serenadeではクラシカルな音使いのトレモロリフで北欧メロディックブラック的なアプローチを見せていたり、The Letter From Deathではアコギを使用、久々にシアトリカルなヴォーカルワークも聴かせてくれていたりと、実は後期サバトの音源では最も中期っぽい要素のある作品でもあると思います。中期の妖しさを表現するには音がクリアすぎるのが残念ですが…。

一曲目The Answer is Hellは邪悪なスラッシュメタルナンバーで、後期で最も80年代サバトを感じさせます。Darkness and Evilタイプのハードコア・スピードメタルナンバーBlack Magical Circle of Witchesはコンパクトな曲ながら劇的な曲展開を見せる名曲。前作まで実践してきたツインリード曲展開曲の短縮版とも言えるかもしれません。浮遊感のあるBメロは妙にブラックメタルです。ちなみに Karismaの英語版のボートラとしてこの曲のZorugelion氏ヴォーカルバージョンが入っているんですが、これが完全にいぶし銀のおっさんヴォーカルで最高!Possession of the Reaperは本作最高のメロディアスなギターソロが聴ける名曲で、リフも一番の小気味良さ。Demonic SerenadeとThe Letter from Deathは上述したように中期サバトを思わせる曲で、前者はクラシカルなメロディも相まってかなりThe Dwellingです。後者はKing Diamondなシアトリカル・メタルナンバーで、間奏のツインリード展開もドラマティックです。あと、In League with Devilsは完全にギャグですね。

Satanasword同様、リリース当時ではIron Pegasas盤とR.I.P.盤で内容が少し違っており、後者ではRegistry of Dark Sideの代わりにPlasmas Goatを収録。Plasmas Goatはニール田中氏がサバトで最も衝撃を受けた曲だそうです。

 

・9thアルバム『Sabbatrinity』

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11年発表9thアルバム。本作から、脱退したテミス氏の代わりにMagnesiumのDamiazell氏が加入しています。全曲速い曲のアルバムというのが本作のテーマらしく、その通り初の疾走曲だけで構成されたアルバムです。しかもただ速いだけでなく、いままでの複雑でドラマティックな曲構成は最小限にとどめて、シンプルかつキャッチーであることに徹しているので、ウダウダ考えずひたすらヘッドバングして楽しめる痛快なブラック・スラッシュアルバムになっているのではないでしょうか。

本作はもう、ひたすらにキャッチー、キャッチー、キャッチー!!もともとキャッチーさはサバトの大きな魅力のひとつでしたが、本作はその方向に完全に振り切っていて、どの曲のサビもライブで一緒に歌ったら最高に楽しいこと受け合いです。

また、Damiazell氏は元Magnesiumのキャリアを活かしてるのかわかりませんがどの曲でも熱血ヘヴィメタルソロを披露していて、キャッチーなアルバムの方向性も相まっていちいちリスナーにアツく拳を握らせてくれます。結果的に彼が参加したアルバムは(現時点では)これのみになってしまいましたが、ハードロックの影響も大きいElizaveat氏、妖しくクラシカルなTemis氏のプレイと比較してDamiazell氏のプレイはもっともヘヴィメタルの王道に忠実だったのではないかと勝手に思っています。

Black Metal ScytheはTotal Desasterを彼ら流のVenomナンバーとして解釈してしまったような名曲。Witch HammersはBathoryのSa crificeを思わせるリフも相まってかなりVenomyですが、サビが死ぬほどキャッチー!どうでもいいですが私はこういう歌メロはないけどバッキングは歌メロを載せられそうなシンプルなコード進行だけが鳴ってるようなサビが大好きでして、これはメタルコアでも多用されるスタイルです。しかしこの曲も中盤でオリエンタルな展開になってしまうのが、破流魔化貪などを思わせて彼ららしい。Northern Satanism〜Root of Ultimate Evilはダークなブラックスラッシュナンバーで、この辺は海外の新世代ブラックスラッシュバンドからの影響を逆輸入してそうな感じもあるかも。特にRoot of Ultimate Evilのダークなリフとサビは最高にカッコいいです。

このアルバムもIron Pagasus盤とR.I.P.盤で内容が若干異なっており、前者にはWitche's Torchesのバージョン2、後者にはWitche's Torchesのバージョン1を収録しています。というか今書いてて気づいたんですが、サバトってSatanとかDemonとかDevilと同じかそれ以上の頻度でWitchって単語を使ってますね。Venomやサタニックなヘヴィメタルバンドは結構Witchって単語を使ってますが、あまりその後のブラックメタルバンドでWitchって単語を使ってるバンドっていないような気がします。幅広い音楽性を吸収している彼らですが、やっぱり彼らの根底にあるものはヘヴィメタルであり、何よりVenomなのでしょう。

 

 

と、こんな感じでどうでしょうか。これでもし全てSabbatのパロネタで会話を仕掛けてくるウマがこれから実装されても、多少はなんとかなるかもしれません。

そう、ウマです。私はいまウマにハマっているのです。最近はウマとサバトのことを交互に考える日々でした。この前ようやくキングヘイローでうまぴょいできて嬉しかったです。キングかわいいよね。高笑いはともかく、悔しいときにキィィーーー!って言うの流石にいま本当に令和か?という気分になります。

エヴァ感想ツイートのかわり

ツイートできないのでこちらに箇条書きする。


萌え!社会!萌え!社会!萌え!社会!社会!社会!!!!!!

・トウジが委員長と結婚して医者(医者ではない)になってるの、わかるんだけどつらすぎる 中学生のときにああいう感じだった奴が結局社会の勝者になる

アヤナミレイ、萌え。おっぱいを揉むところがとくに良かった。

・村との関わりから逃げ続けるシンジと馴染んでいくアヤナミの対比良かった。アヤナミは逃げない。

・ケンケンってなんだよ!やめてくれ!

アヤナミシリーズはもともとシンジに好意を抱くように出来てる設定がアスカのケンケン発言と対比になっててかなしい。どこまでも幻想を排除してくる。でもアヤナミのそれでも自分がそう思うからいいってくだりは好き、たとえプログラムされてようがそれはてめえの意思。

・アスカが鬱病のシンジに対して言う「それ、まわりもしんどいんだけど」、めちゃくちゃ身に覚えがありすぎて泣いた。

・シンジが泣きながらレーションを食べるシーンでどうしてもNHKのラストを思い出してしまう。いくら個の中に閉じこもって逃げても、腹が減ったら社会と関わらざるを得ない。

・ケンスケのサバイバルオタクぶりでみんな生き残れたってのはいいよね。でも、結局そいつがゴミ人間かどうかはオタクかどうかじゃなくて能力のあるなしでの判断になるよって証明でもあるのでやはりつらい。

・俺もみんなから心の中で殴られてるに違いない。

CGでのバトルシーンはなかなか厳しいものがあった。とくに(精神世界での)3東京市でのバトルシーンはちゃんと絵で描いてほしかったな

・ゲンドウ!ゲンドウ!ゲンドウ!ゲンドウ!!!!!!!!!

・ゲンドウのユイ…!ユイ…!のとこだけ音響処理なしの素の音だったの良かった。

・大好きなハードコアを聴いて現実逃避

・ネオンジェネシス後にレイのとなりにカヲルがいるの、やめてくれ………

・簡単に女がいて 簡単に手に入らない

・ラストのシンジくんが神木隆之介なの、オタクカルチャー()の終わりを感じる。これサードインパクト(旧式のオタク(下等な生命)が全員死んだため)

・「終劇」の文字のあとにいつケロちゃんが出てくるかな、と思って10分くらい待ってた。

・俺は綾波レイではないので、エヴァに乗り続ける

・でも俺はアヤナミレイなのでみんながやってるからエヴァの感想ブログで書いちゃう


未来世紀ブラジル 感想

私は真実に気がついてしまった。

アニメでは、女と関われない。

アニメを見ている限り、俺は一生弱者だ。

よく考えれば、俺が日々利用しているDアニメストアも弱者から金を搾取するためのものなんじゃないのか?ヘイト企業d◾️comoは、もともと弱者の傾向にある人間を、同じくヘイト企業ブ◼️ロードや◼️ygamesによる過剰広告によりスマホゲームやアニメの世界に誘導し、その結果さらに女と関われない完全な弱者におとしめ、Dアニメストアスマホゲームに金を落とすだけの奴隷とするシステムを開発してるんじゃないのか?そのシステムに俺もすでに組み込まれつつあるんじゃないのか?はやくこの搾取構造から抜け出さなければ……。

そして私は、一つの天啓を得た。

映画だ…!

映画を観てシネフィルぶってはてなブログでレビューすれば、わかんないけどアイコンがアメリの女とかミッドサマーに救われてた女とかと関わることができるかもしれない……!

 

てなわけで、未来世紀ブラジルを観ました。ディストピアものなので、PSYCHO-PASSとか好きな女とかにアピールできるかもしれないという思いからのチョイスでした。しかし、観終わったあとの私は鬱病になっていました。なぜならこの映画のテーマはズバリ、「映画では女と関われないよ」だったからです。

この映画はいわゆるディストピアもので、1984をその世界観のモデルにしてるそうです。でもそこはあんまりこの映画の本質じゃない気がします。

この映画はゴミ人間の話です。

それもいわゆるアウトローとかニートとかひきこもりとかみたいなわかりやすいゴミじゃなくて、なんとなく社会に属してるけど向上心は皆無だし絶対に努力はしたくない、けど何者かにはなりたい、自己実現はしたい、そういうタイプのゴミの話です。インターネットでよく見かけるタイプのゴミです。俺です。

主人公サムは情報省(劇中のディストピア国家における行政機関)で働く役人ですが、仕事は最低限のみで出世する気はなく、趣味は夢の中でアメコミ・ヒーローになること。母親のコネで昇進の話が来ても、母親に「俺は出世なんかしたくはない」と直々に断りにいきます。こういうタイプのゴミは現代日本にも(というか現代日本にこそ)よく見かけます。そこそこの太さの家のもとに生まれ、言われるがままにお受験または中学受験し、その結果まあまあな大学には一応行くけど、本人は言われたことを言われるがままやってきただけなので別に向上心はなく、やりたいこともなく、ただただ形のない自己実現願望だけを持て余している…、みたいな。そういう奴が誰も興味ない己の自我をこんな長文でインターネットに放流してしまうわけです。サムの母親がまた嫌〜なリアリティをもってゴミを生み出すタイプの人間として描かれています。サムが俺なら、サムの母親は整形垢の末路みたいな感じです。自らの外見(つまり女体)のみに頼って何もしてないと…ってことです。整形垢は俺を嗤っていますが、そいつが孕むのは俺なのです。やったー。

サムの見る夢は、スーパーヒーローになって囚われのお姫様を助ける…というもの(正確には、助けようとする)。ところがある日、ひょんなことから夢の中のお姫様と瓜二つの女性を見かけて一目惚れ。仕事そっちのけでその女性のことを調べようとします。断ろうとしていた昇進先にその女性の情報があることを知るや手のひら返しで話を受け、なんとかそいつの名前がジルであるということを知ります。また、ジルが情報省の誤認逮捕を目撃していたがために消されそうになっていることも知ったサムは、いてもたってもいられずなんとかジルに接触しようとしますが……。

サムの夢は、言うまでもなく萌えているときの私のメタファーです。もしくは、ヘビメタ やハードコアパンクで強くなった気がしているときの私。つまるところ、自己実現願望のみは人並以上にあるけれども、努力は絶対にしたくない人間の現実逃避です。夢の内容が「ヒーローになって女を助ける」なのも悲しいところで、サムは女をゲットして自己実現を果たしたいと思っているわけです。なろう系ですね。

そんな悶々とした日々を過ごす中彼はジルと出会ってしまいます。ここで注目したいのは、彼はジルが自分の夢の中に出てくることを理由に、「勝手に」彼女にシンパシーを感じて接触しようとしている点です。サムは、彼女ならば自分を受け入れてくれるし、彼女を救えば自分はヒーローになれると独りよがりにも思ってしまっているわけです。そうして実際にジルを救おうとするサムですが、彼はヒーローになるどころか事態を悪化させることしかできません。ジル本人からすれば、キモオタクのストーカーに絡まれて人生をめちゃくちゃにされたわけだからいい迷惑です。そしてこれはまさしく私の現在の状況と置き換えることができます。社会の中で堅実な努力をせず、自分を肯定するために何か実体のないもの(音楽、アニメ、映画、その他サブカルチャー全般など)の威を借りているようなゴミが、それを好きな女に勝手にシンパシーを感じて関わろうとしたところでろくなことにならないということです。映画だろうが音楽だろうがなんだろうが、いくら見たところで自らが気持ち悪い限り何の意味もないということがこの映画のメッセージだと私は感じました。こんな当たり前のことを長文でつらつら書いてる私は非常に幼いですね。

それともう一つ面白いのが、サムはジルを知るためや救うために何か行動しているように見えて、実は自力では何にも努力してない点です。昇進は親のコネですし、ジルを救おうと行動を起こすときもまず親の人脈を頼ります。しまいには、情報省の追手から逃げる先も親の住む実家という情けなさ。彼は表面では親を疎んで辟易しつつも、根本のところでは親に依存しきっています。もっとベタベタにマザコンならまだ良かったんですが、このダメさは本当にリアルです。それをよく表しているのがラスト周辺のあのシーンでしょう。そういう精神的に未熟な子供大人(フリークス)が女と関わって自己実現しようとしたところで結局その根っこにあるのは…ってことだと私は受け取りました。

またこの映画には二人、サムと対照的なキャラクターがいます。一人目はサムの同僚・ジャック。彼はサムとは反対に、統制されたディストピアに完全に適応し出世をしていく、いわば健さんとして描かれます。もちろん既婚者です。とはいえその仕事は事実隠蔽のための拷問が主なので彼もまた狂っているわけですが。サムが社会に適合して狂ってしまった人間ならジャックは社会に適合して狂ってしまった人間と言えるでしょう。もう一人は脱法ダクト修理人でテロ容疑者のタトル。彼は無駄な手続きだけ要求するくせにろくな仕事をしない正規の修理人の代わりにダクトを修理してくれる正義の修理人です。無機質なビル街をターザンのように駆ける彼の姿は、サムの目にはまさしく夢の中のスーパーヒーローのように写ります。私がヤクザ映画見たり、ハードコアの怖いバンドマンに憧れたりするようなもんです。この2人の存在が、割り切って社会に適合することも、勇気を持って完全に社会から外れることもできないサムの情けない中途半端さを逆説的に表現しています。

自我の話ばっかりで、この映画の一番の重要ポイントであるディストピア要素についてあまり書いてなかったので最後にその話をします。この映画のレビューに、ダクトの剥き出し具合が作中の社会における階層を表しているってのがあってなるほど〜と思いましたが、それともう一つ感じたのは、作中のディストピアは完全な独裁って感じじゃなく、なんとなく息苦しかったり、なんとなくうまくいかなかったりって表現のために使われてるんじゃないかってことです。すべてが自動化されて一見便利そうに思えますが、目覚まし時計が壊れてたり、パンにコーヒーがかかっちゃったり、暖房が壊れたり、エレベーターやリフトが目的の階で全然止まってくれなかったりで、なんとなくうまくいかずイライラします。しかもこういった描写がされてるのはサムが何かしたときだけです。みんなはうまくやってるのに、俺だけなぜかうまくいかない。そういうダメ人間から見た社会の息苦しさとかつらさを自動化されたディストピアとして表現してる部分もあるんじゃないかと思いました。でも実際はそんなことはなく、全部独りよがりの妄想でしかありません。私はどこまでいってもサム・ラウリーです。キモいよー。

そんなわけで未来世紀ブラジル現代日本のインターネットというディストピア自己実現願望を持て余して生きるそこのあなたにこそオススメしたい映画だな〜って思いました。一緒に鬱病になろうぜ!

ちなみに冒頭で散々C◼️gamesをディスってましたが、現在絶賛ウマ娘にハマり中です。ゴルシが激萌えなんですがなかなか勝たせてあげられず、このままだと課金もしちゃうかもしれません。搾取の天才かよ………。

2020年冬アニメ 感想

お久しぶりです。相変わらずアニメとオナニーだけの人生で、どんどん自分が世間から必要とされない人間になっていく実感があります(注:元々必要だったことはない)。何もしない時間はそれだけで人の価値を下げていくものなんだと最近わかってきましたが、結局何もしないまま1日が終わってしまいます。どうすればいいのでしょうか。


さて本題の春アニメですが、近年どんどん見るアニメの本数が減ってきてて良くないですね、なんと今期は7本しか見てません。うち二本は早々に挫折し、一本は制作が遅延してるレールガン三期なので、実際最終話まで見たのは4本です。次ブログを更新するときにはオナニーだけの人生になっているかもしれないと思うとぞっとします。


【完走したもの】

・ネコぱら

総括:自我なし・中身なし・ストレスなしの、まさしく萌えしかない世界が全編通して繰り広げられる素晴らしいアニメでした。個人的には2015年のえとたま(あれがもう五年前というのが信じられない、俺は何も変わっていない)以来の、とても令和以降の作品とは思えないセンスの作品です。しかしながら、OVA(恐らくこちらの方が原作に準拠した作風になってると思われる)と比較すると、主人公の存在感が明らかに薄まっており、(原作と比較して)所有欲を刺激されることを嫌う現代オタク向けのチューニングは確実になされているとも感じました。つまる

ところ、OVAと比べるとかなりヒロイン同士の百合的な絡みに焦点が当てられた作りになってると思います。この辺でOVA版とTV版での好みは分かれるかもしれません。僕はシャバいので個人的にはよりストレスレスなTV版の方が好みです。あと、主人公ののぺーっとした喋り方には毎回笑わされてしまいました。あれも主人公の人間性を感じさせないための演出なのだとしたら制作スタッフは天才だと思います。

良かった点:

前述した通り、(ヒロインの)自我なし・(物語の)中身なし、すなわちストレスなしの素晴らしい出来になっている点です。しかもTVアニメ版では原作にはある主人公への(恋愛感情としての)好意という自我すらも取り除かれているので完璧です。猫耳美少女がしょーもないことで騒ぎ、わちゃわちゃしている……萌えアニメにそれ以外の何が必要でしょうか?必要最低限のもの以外全てを削ぎ落としたDischargeの音楽にも通じるミニマルな美学がそこにはあると思います。7話の内容の無さは白毫です。

悪かった点:

作中のネコたちが非常に人間的な社会活動を行っているので、僕のような本当に何もしていない人間は見ていてつらくなるかもしれません。俺はネコ以下の存在なのかよ………。僕のような本物のカスはネコぱらのようなアニメを見る人間の中でも殊更に少数派かもしれませんが、さらなるストレス除去のため、二期を製作なされる際は作中の一切の社会活動を除去するというのも一考の余地があるかもしれません。制作陣のみなさん、何卒宜しくお願いします。

萌え:ココナツ&アズキ


・群れなせ!シートン学園

総括:この作品も萌えしかない世界を展開していましたが、ネコぱらと比較するとかなりギャグアニメ的側面を前面に押し出してます。ギャグのテンポの良さやテンションの高さは最も脂の乗ってた時期の動画工房作品を彷彿とさせるところもあり、非常に僕好みでした。

良かった点:

まず、メインヒロインの大狼ランカ役に天才・木野日菜をキャスティングした手腕は見事です。ぶっちゃけ木野日菜の奇声を聴いてるだけで射精が止まらなくなるので五億点出てると言えるでしょう。内容の方に言及すると、動物の生態をキャラの設定やギャグに転化するのがかなり上手いと感じました。個人的にシマウマのくだりとか好きです(ロバ、あれ僕ですね)。僕は低学歴で学がないので、動物豆知識ものとしても充分楽しめました。あと、イエナには非常に射精中枢を刺激されましたね。主人公のクズさもいい味出してました。

悪かった点:

特にはないですが、たまに来る光のノリが見ててちょっと厳しかったかな……。

萌え:大狼ランカ、斑羽イエナ、獣生ミユビ(すけべだったね…)


・異種族レビュアーズ

総括:上記2作が萌えしかない世界だとすれば、この作品は清々しいほどにすけべしかない世界でした。また、すけべを通して結ばれる漢達のアツい友情には思わず目頭を熱くさせられる場面も多々ありましたね。

良かった点:

まずはなんと言っても3話でしょう。ぶっちゃけ3話がある時点でこの作品はもう勝ちです。BPOには負けましたが(爆)。ぶっちゃけTSF的にはまあありがちなシチュエーションですが、地上波でこれ見れただけでお釣りが来ます(俺はDアニメで見たけどね…)。また、クリムくんの存在はやはりデカいです。富田美憂×ふたなり×ムッツリ、おたくを射精に導く方程式としてこれほど適したものはほかにないと断言できます。他にはキノコ、ゴーレム、アンデッド、フェアリー(受付の姉ちゃんはマジで最高だった!)、イメクラあたりがチンポに来て良かったです(ぶっちゃけこのアニメはチンポに来るか否かでしか良し悪しの判断ができない)。チンポに来るもの以外で良かったところをあげるなら、6話の最後の駄洒落とか、サラマンダーの膣内でソーセージを焼くシーンとかは本当にしょーもなくて良かったと思います。

悪かった点:

やはり萌えという点では他作品に比べると劣っていたと言わざるを得ないでしょう。前述したようにクリムくん、フェアリー店の受付、あとキノコ店のチン子さん、メイドリーさんは良かったですが。

萌え:クリムくん、受付フェアリー、チン子さん、メイドリー


・虚構推理

総括:わりとしょーもないアニメで、ぶっちゃけ後半厳しい顔つきになってました。こういう高品質気取りで蓋を開ければしょーもないアニメが一番トサカに来ます。まあヒロインの岩永琴子の存在はチンポに来たのですが、それすらも僕を嘲笑うための罠でした。

良かった点:

岩永琴子は確かに萌えでした。一眼一足、ぷにぷにのほっぺた、チンポケースになるための体型、彼女を構成する要素は非常に良かったです。最初の2話は話も(それなりには)面白かったし、ヒロインは萌えだし、結構期待してました。けれども彼女は

悪かった点:

破瓜していました。破瓜とは即ち自我であり、自我とはすなわち嘲笑です。岩永琴子は、僕を嗤い始めました。おまけに3話以降は化物語をさらにしょうもなくしたような話が延々と続き、物語自体の求心力もどんどんなくなっていきました。後半のレスバトル回はマジで厳しかったかな…。ぶっちゃけ鋼人七瀬がどうなるかより、琴子ちゃんの膜の有無の方が気になってどうしようもありませんでした。

萌え:岩永琴子(二話まで)


【途中で脱落したもの】

・インフィニット・デンドログラム

漫画を今井神が担当していたので視聴しましたが、SAOから緊迫感を全て抜いたような話でなかなか厳しいものでした。ネメシスちゃんがガチ萌えだったので(二話は本当に最高)、4話くらいまで見ましたが、ネメシスちゃんの萌えシーンがない回が本当に苦行だったので脱落してしまいました。今作を完走したオタクによると最終話まで萌え度のピークは2話らしいのでガックシです。萌え以外では、1話で主人公が多用する「後味が悪い!」って台詞が出てくるたびに爆笑できたのは良かったです。

・恋する小惑星

一部で話題の地学部アニメです。普通に悪くなかったんですけど見てるうちに眠くなっちゃうのでいつのまにか見なくなってました。これは完全に僕の修行不足です。精進したいです。


あと全然関係ないのですが最近ダークウェーブ、コールドウェーブにハマってて、She Past AwayとかPink Turns Blue聴いては泣いてます。昨日もAsylum Party知って感動して、フランスのコールドウェーブもっと掘らなきゃなとなってます(ていうかWikipedia見て知ったんですけどコールドウェーブってジャンル自体がフランス発祥なんですね)。おススメあったら教えてください。ではまた。