Bulldozer 80年代のアルバム 感想

秋だ!紅葉だ!シルバーウィークだ!

シルバーウィークといえば?……そう、ブルドルゼルです。

まあぶっちゃけシルバーウィーク関係なしにいまブルドルゼルがちょっと盛り上がり気味なので、100%自己顕示欲を満たすため、昼休み中ヒルナンデスを見ながらシコシコ書いてみました。前回と比較してかなりテキトーかもですが、お暇なときにでもどうぞ。

 

・1stアルバム 『The Day of Wrath』

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怒りの日ことThe Day of Wrathです。汚くてドタバタなブラックメタルで、このアルバムを一言で評するなら"イタリアのVenom"ってことになるわけですが、この"イタリアの"って部分が非常に重要だと思ってます。というのも、個人的な初期Bulldozer最大の魅力は、Venom及びTankの影響絶大な汚いロックンロール・ブラックメタルでありながら、イタリア暗黒音楽の遺伝子も絶大に受け継いでいる部分だと感じているからです。最初にデモを送った相手がキングダイアモンドだったっていう有名な話や、AC Wildのマント姿にも現れているように、Venomに絶大な影響を受けながらも本家とは明らかに別ベクトルの、(イタリアじゃないけど)Mercyful FateやGoblin、そして何よりもDeath SSに影響を受けていると思われるイタリアならではの暗黒オカルティズムが音に表出しまくってるのがカッコよすぎると思います。もちろんVenomにもサタニック・オカルティックな部分はありますけど、BulldozerはVenomのサタニック・オカルティックな部分をDeath SSや(イタリアじゃないけど…)Mercyful Fate、それ以前のイタリアン暗黒プログレやハードロックのような暗黒シアトリカルな方向で表現してる気がして、実際それがアートワーク・見た目とか音の雰囲気に現れてるところがすごく好きなんですよね。

イントロThe ExorcismとアウトロEndless Funeralは、その無意味な長さ・クワイアと詠唱のサンプリングに重なる邪悪すぎるうめき声・妖しすぎる雰囲気と、完全にイタリア暗黒音楽だし(Venomより宗教感・儀式感を押し出してるのがイタリアっぽいのかも… 宗教感ってなんとも頭の悪い表現ですけど)、実質ラストのWelcome Deathはサバステイストこそあんまりないものの、完全にイタリアン・オカルティック・ヘヴィメタル!その他本編も、曲はわりとロックンロールなのに、ヴォーカルのリバーブが凄すぎて一番ノリノリなナンバー、Whiskey Timeですら妖しすぎる。全体に漂う黒いというよりは薄紫の瘴気のような妖しい雰囲気が最高すぎます。Mortuary DrapeとかOsannaにも似たような空気を感じるけど、こういう空気感はイタリア独特のものだと思います。本作でのAC Wildのヴォーカルは、(いい意味での)声量の足りなさと異様にかけられたディレイ・リバーブも相まって、まるでモーターヘッドレミージャパコアっぽくなったようでカッコ良すぎる!

あとBulldozerの特長のひとつとしてメロディアスなギターソロがありますが、本作の場合はCut throatやThe Great Deceiverなどがいい例だと思うけどメロディがかなりクラシカルで、この雰囲気の中でやられると中世宗教感も増してますます妖しい!

曲単位で言えば、Cut throat・Fallen Angel・Whiskey Timeはメタルパンクス御用達のメタルパンク・クラシック。特にFallen Angelは完全にAbigailの元ネタなドライヴィン・ロックンロールからのメロディアスな必殺ツインリードで絶頂させる名曲です。Insurrection of the Living DamnedはドタドタしたタテノリのリズムがモロVenomですが、ヴォーカルのディレイ・リバーブが深すぎるのとアルペジオなのか弾けてないのかわけわかんないリフがカッコ良すぎる。AbigailのMetal Got Sickのアウトロはたぶんこの曲のアウトロのオマージュだと思います。The Great Deceiverはクレイジーに弾きまくるリードギター、謎にテクニカルなリフと完全に終わらせどころを見失っただけのアウトロが最高で、歌い出しのフレーズWelcome All Hell FuckersはAbigailのEP名になってます。Mad Manもクレイジーなギタープレイと曲展開の曲ですが、この曲は途中のツインリードがちょっとオリエンタルなのが良いです。このアルバムは全体的に曲展開が唐突でわけわからんのがアツいですよね。ところどころ謎にテクニカルなところとか、演奏の勢いだけっぷりとか、完全に初期衝動で泣けてきます。そして、曲展開が唐突&メチャクチャなのも、イタリアン・暗黒プログレの特徴ですしね。とにかく、俺のようなペーペーのゴミに言われるまでもなく全メタルパンクスマストの名盤だと思います。

 

・2ndアルバム 『The Final Separation』

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2ndアルバムです。わりと地味な立ち位置のアルバムらしいですが、個人的には非常に好きな作品です。というのも、さっき書いたように、BulldozerはVenomからの影響と同時によりシアトリカルなサタニックメタルからの影響も大きく受けているっぽいのが魅力ですが、そのシアトリカルメタルの部分が最も出てるのがこのアルバムだと思うからです。このアルバムは前作以上にVenom/Tank直系のロックンロールとイタリアン・ダークネスの融合が渋すぎる!Bulldozerで一番妖しくてサタニックなのはこれかなと思います。

といってもその大部分を担ってるのが一曲目The Final SeparationとラストThe Death of Godsの二曲なんですが。二つとも前作のWelcome Deathを引き継いだようなサタニック・メタル・ナンバーで、なんといっても耳を引くのがクリーンギターの使用とオペラチックというか、似非クワイアなコーラスワーク。私はこういうのをやられると問答無用で泣いてしまいます。たぶんMercyful Fateからの影響が大きいのでしょうが、イタリアのバンドはそもそもコーラスワークが分厚いイメージがあります。オザンナの1stなんかも宗教的なコーラスワークが妖しくて素晴らしいですが、なんとなくそういうイタリアの血を引いてるように思えてなりません、ただの思い込みですけど。特にThe Death of Godsは前作のWelcome Deathをさらにオカルト・エピックに進化させたような大作で本当に素晴らしい…。また、後述しますがBulldozerはプレ・ブラックメタルバンドの中でもBathoryと同じくらい音楽的にノルウェーブラックメタルに影響を与えた(かわからないけど、直接音楽的にリンクすることをやってた)バンドだと思ってるんですが、The Final Separationでやってるドコドコ・ツーバスの上に歪ませたギターで表現された妖しいアルペジオを乗っける手法、これ完全に後のBurzumを先取りしてて凄い!Burzumってかなり突然変異的な部分が多い音楽だと思うけど、もしかしたらその元ネタのひとつはBulldozerなのでは?と思ったりもします(これも全く根拠のない妄想です)。上述した似非クワイアもブラックメタルでよく使われる手法ですよね。高音弦でのブロークンコードもやってますし。

他の曲は1stと同じく極上ロックンロールナンバーで構成されてますが、The Caveなんかはコードから外れたベースラインやクリーンギターの挿入など妖しさ満点。というか、本作はベースプレイが妖しすぎます。Ride Fast Die HardやSex Symbol's Bullshitなんかはは1stでのキラー曲直系の爆走ロックンロールナンバーですが、ベースプレイのせいか、はたまた全体的にケムい音作りのせいか、はたまた単純にジャケットのカラーリングに惑わされてるだけかもしれませんが、常に妖しい紫色の雰囲気です。個人的に大好きなNever Relax!はTank直系のロックンロールをシリアスにしたようなアルバムのテンションがピークに達する名曲で、2回目のサビがカッコよすぎる!ギターソロ明けのリフに戻るとこでおしっこ漏らします。

 

・3rdアルバム 『IX』

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3rdアルバムです。このアルバムからこのバンドはガラッと音楽性を変えスラッシュメタル/プレブラック路線に突き進みます。ツービートの速いリズムに単音トレモロリフ。とはいえあんまり似たバンドはいなくて、やっぱりプレブラックメタルって表現がしっくりくると思います。先ほども書きましたがBulldozerはかなり2ndウェーブのブラックメタルと近いことをやってると思ってて、アルバム全編でみられる単音トレモロリフもそうですが(IXのBメロでみられるクラシカルなメロディのトレモロリフなんかはかなりブラックメタル)、わかりやすいのはAbigailもカバーしてるHeaven's Jailじゃないでしょうか。ブラックメタルでよくある手法(そして突然変異的な手法)として歪ませたシャリシャリのギターでアルペジオおよびブロークンコードを鳴らす、つまりそれまでのエクストリームメタルでは排除される傾向にあった高音弦もちゃんと使った(つまるところ、普通の)コードワークってのがあると思いますが、この曲は初っ端からそれをやってます。この曲に限らずアルバムの至るところでこの手法が散見されます。Bathoryの3rdってシャリシャリのギターサウンドとかコードでのトレモロリフってのはやってたけど、これは案外やってなかったと思うんですよね。ノルウェーの人たちがどれだけ影響を受けてたかわからないですが、川嶋さんのIhsahnインタビューではBulldozerを勧められて聴いてたって話をしてたんで結構みんな聴いてたんじゃないでしょうか。Ihsahnも結構その手法を使う人の筆頭な気がします。

本作でのギターソロはたぶん彼らのキャリア中でも最強のメロデックさで、IXでの構築美溢れたギターソロやDesert!での燃えるツインリードはまさに極上です。Desert!のツインリードはいつか弾けるようになると思ってたんだけど、いまだに弾けません…。IXのソロは本当に名ソロだと思います。ソロが終わって一瞬静寂が訪れてからサビに戻るところ、本当にカッコよすぎますよね…。

The DerbyはBulldozerで最もキャッチーなアンセム。他には前作までのロックンロールな感触を残すIlona the Very Best、歌詞が最悪でサイコーなMysogynists、アルペジオを多用したリフとメロディアスなソロで昇天させるThe Vision Never Fadesあたりがお気に入り曲です。

あと、実は初めてキーボードをちゃんと導入したのはこのアルバムからです。チェンバロやチャーチオルガンの音色を選択してるのはいかにもイタリアって感じですね。とはいえ音質の向上もあって妖しさはほとんどなくなっちゃってます。AnthraxとかS.O.Dっぽいタテノリのビートダウンパートをちょこちょこ入れてるのが最大の原因な気もしますが…。

ちなみにドラマーは前任の"Don" AndrasからRob "Klister"に変わってますが、個人的には前任者の方が勢いがあって好きです。IXの初っ端から裏表ひっくり返ってるし……。彼の名前を冠した曲では散々な言われようでかわいそう。

あと、Abigailの曲展開はこのアルバムの曲展開をかなり参考にしてそうですね。Bメロがつなぎみたいになってるところとか。

 

・4thアルバム 『Neuroderili』

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ルーツオブブラックメタルとしても有名な4thアルバムです。このアルバム一番の特徴は大胆なキーボードの導入でしょう。前作でのキーボード使用は曲のアウトロ・イントロ的使用に留まってましたが、今回は思いっきり曲中の重要なファクターになってます。でも、インタビューによるとこのキーボードの使用はサタニックメタルや70'sロックからのインスピレーションではなくて、小室哲哉の影響らしいですが。AC wildはのちにユーロビートで大成功しますが、まさかこのアルバムの時期からそのへんの影響を受けてたとは…。ドラムも、一応メンバーはクレジットされてますが打ち込みですよねこれ、たぶん。こういうところからもクラブミュージックからの影響が伺えます。

とはいえ、音だけ聴いたらさっぱりそんなことは分からなくて、なんといってもタイトルトラックはキーボードの使用も含めて完全にブラックメタル!ギターワークもシャリシャリの音+高音弦を強調しててもろブラックメタルです。でも、キーボードの音色にクワイアとかストリングスじゃなくてチャーチオルガンを選ぶところがやっぱりイタリアです。

でも、タイトルトラック以外の曲は意外にもキャリアの中で最もスラッシュメタル然としていて、前作では速いパートはほぼトレモロリフで構成されていて、刻みリフはビートダウンパートのみで使用されてましたが、今回は速いパートもほぼ刻みリフです。Minkionsなんか明らかにベイエリア・スラッシュからの影響がモロ出しな曲ですね。でも、こんな曲でもちょっとCarnivoreのArmageddonを思わせるピアノによるちょっとした味付けがされてて、やはりキーボードが本作を個性的なものにしてます。Art of Deceptionは、前作で見せた爆走スラッシュを刻みリフで表現したような曲調からまるで様式美メタルのようなギターとキーボードのソロバトルに雪崩れ込む異形のナンバー。Illona Had Been Electedはキーボードを大胆にフィーチュアしてて、妖しいクリーンギターから曲が始まったりしてちょっと2ndの路線も思わせます。また、We are… Italian、Impotenceなんかの初期のロックンロール・ブラックメタルっぽさを思わせる曲も収録されてるのが面白いです。特にWe Are…Italianは1stアルバムに入っていてもおかしくないような極上のロックンロール・メタルパンク!3rdと比べるとわりと初期っぽい要素もあるアルバムだと思います。

ラストのWillful Deathも3rdでは一度根絶されてた、1st,2ndでの伝統に従ったような荘厳なスロー・ナンバー。でも個人的にこれはもうちょっと妖しさが欲しいところ。The Death of Godsの音でやってくれてたら…。

 

・ライブ盤 Alive… in Poland

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Abigailがオマージュしまくってることで有名なライブ盤。どの曲もかなりの熱量の演奏で、客の盛り上がりもアツいです。とくにアルバムでは打ち込みっぽいドラムの4th収録曲は生のドラム演奏だとやっぱり勢いが違いますね。Minkionsとかアルバムの数倍凄い。

あと、久々に聴き直してわかったのは、やはりIX(曲)のアルバムテイクの最初のドラミングは、意図的に頭打ちにしてるのではなく単純につんのめってるだけ、ってことです(このアルバムの一曲目IXでは普通に裏打ちで叩いてるので…)。ただ、個人的にはIXはフルで聴きたいなあ…あのギターソロが最高に好きなので。現在でもBulldozerのライブでは基本的にIXとDesertはメドレー形式でやるのが定番みたいですが。

Overkillのカバーもやってて、これは観客全員大合唱でアツい!Andi Panigadaってわりとクラシカルなプレイをしてるイメージですけど(インタビューによるとリッチー・ブラックモアの影響らしいです)、ブルージーなプレイもしっかり映えますね。

あとCD版ではLPより曲数が増えてて、2ndアルバムの曲を3曲やってます。中でもThe Final Separationはなんとキーボード入りでやってて、なんで初期Bulldozerにキーボードが入ってないんだ!という不満を少し解消してくれる嬉しいテイクです。

 

と、こんな感じでどうでしょうか。これでもしブルドルゼルのパロネタで会話を仕掛けてくるウマがこれから実装されても、多少はなんとかなるかもしれません。ちなみに私はもうしばらくウマにログインしていません。諸行無常…。

本当は復活作についても書きたかったけど、シルバーウィークも終わりそうなのでとりあえずこれで…。個人的に復活作はしょーもない曲もあるけど、Bulldozerが先んじて行っていたブラックメタルっぽい手法を、ブラックメタルから逆輸入して再解釈したような作品で結構好きです。

 

ちなみに、私は前回でも〜に影響を受けているに違いない、とか影響を与えているに違いないとかマニアぶっていろいろ書いてますが、すべて私の妄想なので、根拠はありません(さすがにインタビューとかは妄想ではないですけど。でもだいぶ読んだのが昔なので…読み漁ってるわけでもないし)。私は思い込みの激しいオタクなので、私に話しかけてきた女の子は全員私のことが好きだし、ブルドルゼルはブラックメタルに影響を与えているのです。次はお前に告白してやるぜ……。